豊島逸夫の手帖

Page2445 年末ロシアの嵐、市場を直撃

2017年12月4日


先週金曜日のNY株式市場でダウ平均が一気に前日比350ポイント幅で急落したことに衝撃の大きさが窺える。


トランプ政権発足時には大統領の側近中の側近と言われたフリン元大統領補佐官が「有罪認める」の第一報は、まさに「青天の霹靂」であった。アルゴリズムは一斉に株売り注文を発動した。
この初期作動による市場の反応は税制改革進展期待により程なく相殺された。
NY金価格も1270ドル台から1290ドル近くまで急騰したが結局1270ドル台に戻した。
しかし、12月相場はモラー特別検察官率いる精鋭弁護士団の次の一手が政権中枢を揺らす可能性を睨み、思わぬ荒れ模様になった。「捜査の進展状況次第では今年のクリスマス休暇を切り上げねば。」と語るヘッジファンドの「覚悟」が市場の緊張感を映す。年内にトランプ政権の存続に関わるような事態が勃発することは、これまで想定されていなかったからだ。

今回の捜査の真の標的は娘婿のクシュナー氏だ。同氏のロシアゲート関与について有力な証言・証拠が出ると政権中枢に一気に火がつく。そしてトランプ氏に司法妨害行為があったか否かが最大の争点になろう。フリン氏がFBIの捜査対象であったことが立証されれば、前FBI長官コミー氏解任劇が司法妨害と見做されよう。そうなると「弾劾」の可能性もちらつく。


日本市場の視点でまず気になるのは北朝鮮問題への影響だ。米国側の政権不安定化により、マーケットが新型ICBM発射実験を無視できなくなる可能性がある。ヘッジファンドの日本株売り手仕舞い、そして有事の円買い・金買いの動きを強めるシナリオだ。

更に市場混乱が米利上げに与える影響も気になるところだ。現在の米国経済は絶好調と言える状況なので、いよいよ来週に迫った12月利上げは予定通り決定されよう。来年の米国政治リスクに備え出来るうちに利上げを実行して、有事の「利下げ」という金融政策手段を確保する発想もFRB内で共感を得るだろう。一方、来年の利上げに関してはインフレ率伸び悩みと並んで政権不安が抑制要因として意識されよう。新FRB体制で存在感を増すと見られるタカ派FOMC参加者の今後の発言も注目度が一段と高まろう。


一方、TPPにとっては朗報となる可能性も秘める。来年の中間選挙でトランプ政権不支持が顕在化すれば、米国第一主義にも歯止めがかかるからだ。


総じて市場は来年の相場見通しを一通り書き終えた時期に、新たなトランプリスクの書き込みを迫られている。ヘッジファンドは市場の不透明感が増すことで臨機応変な出動準備を整えている。彼らの日本株と円・金への仕掛けで日本の年末相場も揺れる状況を想定しておく必要があろう。

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