豊島逸夫の手帖

Page2532 「フロリダ通商対決」米国市場の視点

2018年4月18日

フロリダ発のトランプ・アベ会談に関する報道が、米国人投資家には日本株を取り巻く政治経済環境について知る機会になっている。「なるほど、安倍首相にそんなスキャンダルがあって支持率が低下しているのか。」、「ほう、拉致という問題があって安倍首相がサバイバルの鍵となるのか。」

日本株担当などの知日派を除き、一般投資家にとっては何から何まで初耳。興味津々という感じだ。知日派と称する人でも「日本人は北朝鮮ミサイルに備え退避用バンカーを掘っている。」など危うい発言も目立つ。

かくして「学習」した上で今回の首脳会談はと言えば、日本側にとってタイミングが悪いと映る。

今週米国内では、コミー前FBI長官の回顧本でトランプ大統領の御乱行ぶりが書かれ、タブロイド紙のみならず一般紙でも報道され大きな話題になっている。更にモラー特別検察官のロシアゲート捜査が本丸に迫りつつあり、トランプ大統領のお尻に火がついた如き状況になっている。イメージを損なわれたトランプ大統領としては、通商問題では容易な妥協はしがたい雰囲気だ。友人として安倍首相に持たせるお土産があるとすれば、鉄鋼・アルミ追加関税対象から日本も他の友好国同様に外すという措置などが指摘される。

TPP復帰については、中間選挙向けリップサービスでトランプ流揺さぶり交渉術との見方が多い。カドロー国家経済会議委員長らに再吟味を指示したということで、結論を引き延ばすことになりそうだ。トランプ大統領はあくまで二国間協定に執着する。日米の溝が深いことが伝わってくる。

「安倍首相、トランプ大統領と通商対決へ」との見出しが象徴的だ。

一方北朝鮮問題については、折しも昨日、南北首脳が休戦状態から最終平和協定締結へ動くとの一部報道がNY市場にも伝わる巡り合わせとなった。ポンペオ新国務長官が極秘北朝鮮訪問をしていて金正恩委員長と会っていたことも本日明らかになった。「日本置き去り」が意識されているが、反応は肩をすくめるだけで同情論はさほど聞かれない。拉致問題を米朝会談のアジェンダ(交渉項目)に載せることが「シンゾー」に持たせるお土産となるのか。

中短距離ミサイルの脅威については米国も共有する程度のことは言えよう。

「共有」と言えば両者ともスキャンダルを抱えている。commiserate(同情し合う)という表現が使われていた。

総じて、トランプ大統領は本音と外交辞令を使い分けていることは明らかだ。

安倍首相を迎えるトランプ大統領の言動は友好的だ。

しかし、一足早くフロリダ入りしたトランプ大統領は、集会で「我々の友人が最悪の敵だ。我々は利用されている。EU、そして日本、韓国。」と名指しで非難して牽制した。「利用されている」という表現は3月22日にもトランプ大統領が使った言い回しだ。その時は「私は安倍首相に話す。彼はいい奴で友人だ。しかし、笑いの表情がある。その笑いは、これだけ長期間米国を利用し続けてこられたことが信じられないということなのだ。こういう日々はもうおしまいだ。」とまで語っている。

先週4月13日にも「日本は長年通商面で我々に厳しく打撃を与えてきた。日本と良い取り引きするために画策している。」とツイートしている。

市場は首脳直接会談を経ても日米通商摩擦が続くことを覚悟している。会談後も円高警戒は解けず、トランプ不信も解けず。NY金は底堅い。

話題は変わるが今日の記事で興味深かったのが「今日、日中鰻貿易会議開催」というニュース。日本と中国の養殖や貿易関係者が集まり、土用の丑向けの価格や供給量の見通しを話し合うという。今年は稚魚が不漁でウナギ相場は高止まり。中国でもこれまでの需要は低級品だったが、上級品の需要が高まっているという。上海では日本式のウナギ専門店が増え「うな重」が2500円相当で供されている。回転鮨でもサーモン・イクラと並ぶ人気ネタ。ウナギの消費構造が変わるという。日本のウナギ好き消費者としては心配。。。

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