豊島逸夫の手帖

Page2717 市場が注目するFRBの「ステルス」利上げ

2019年1月29日

企業決算、ワシントンでの米中通商交渉、ISMや雇用統計発表、そしてFOMC開催。

重要なイベント目白押しの今週だが、特に金融政策動向は中期的なマネーの流れに大きな影響を与えるので注目度が高い。

今年からFOMC終了後、毎回FRB議長記者会見が開かれることになり、昨年までは無風であった1月FOMCにも関心が集まる。

利上げは少なくとも6月まで停止の観測が多数派となり、代わって注目点はFRB資産圧縮にシフトしそうだ。

量的緩和によりFRBが買い取った国債とMBS(住宅ローン担保債券)は4.5兆ドルに膨張した。このFRB保有債券を徐々に減らして「適正水準」に戻すことも「金融正常化」のためには欠かせない。

問題は、この「量的縮小」プログラム実行がFRBにとって未知の海域での海図なき航海となることだ。

FRBの「適正資産規模」が何兆ドル程度なのか。資産圧縮の落としどころが見えない。

約4.5兆ドルにまで膨張したが、現在は4兆ドル程度まで減ったと推定されている。イエレン前FRB議長の時代に始まった資産圧縮プログラムにより、月額500億ドルを上限に現在に至るまで圧縮されてきたからだ。その方法は、償還期を迎えた保有債券を再投資せずに自然体で減らしてゆくという穏やかな政策手段である。保有債券を売却するような積極的圧縮策は思わぬドル金利急騰を招くリスクがあるので回避されている。

例えて言えば、FRB資産圧縮はステロイド療法の停止に似ている。花粉症が酷くなるとステロイド投入で症状を緩和するが、劇薬ゆえ止める時には数週間かけて徐々に投入量を減らしてゆく。いきなり止めると体がショック症状を起こしかねない。

それゆえFRBも「バーナンキショック」再来を防ぐために、つとめて温和な政策手段を採ったのだ。

それでも過剰流動性依存症に陥っている市場の心理は不安から抜けられない。

資産圧縮はどの程度の引き締め効果があるのか。

イエレン氏は2017年1月19日、スタンフォード大学での講演原稿で「FRB保有債券の再投資が終了に近づけば、0.25%の利上げ2回分に匹敵する効果がある」と記している。

それゆえFF金利引き上げは停止しても、資産圧縮を続ける限り実質的な利上げが継続されると市場は解釈する。

なおFRBの適正資産規模については1.5兆から3兆ドル程度との見解が多かったが、最近は3兆ドル以上との意見が増えている。市場目線では「ドル不足」、「ドル調達コスト上昇」がリスクと見なされているからだ。実質的に「世界の中央銀行」であるFRBが保有資産を大きく減らすと、市場の懸念材料と化す可能性があるのだ。

このような市場環境ゆえ昨年10月にパウエル現FRB議長が不用意に「資産圧縮は自動操縦。」と語り、マーケットの状況にはお構いなしに予定通り粛々と実行してゆく姿勢を見せたことが市場混乱を招いたのだ。

その後「経済環境が変化すれば政策も変える用意あり。」と発言は修正された。

当初はアドリブ発言が目立った実務家出身のパウエル氏も、最近ではイエレン・バーナンキ氏との壇上対談にて予定原稿を読み上げるほど慎重になってきた。

果たして台本無しのFOMC後記者会見で、資産圧縮についていかに語るか。その一言が中期的マネーの流れを変える可能性を秘める。

FRB資産圧縮停止となればドル金利安、ドル安でNY金高になる。

さて、今日の本文に書いたステロイドだけど、私は本当に花粉症が酷くなるとステロイドを吸引する。例えば明日講演なのに声が嗄れて喋れないという最悪の場合に緊急用に服用する。あまりにも効果があるので、余程強い薬なのだと怖くなることもある。一旦服用したら2週間は続ける。毎年のように(今年もたぶん)お世話になるだろうね~~。

 

 

 

ページトップ