恐怖から不安へ

Page813 恐怖から不安へ

2010年2月9日

今日は、本欄2009年9月15日付け「リーマンショックから1年-ネット上でプレゼンテーション」に掲げたキーワードを再点検してみたい。

―財政出動のステロイド効果依存症
―雇用なき回復
―景気は変形W字型の展開
―縮小均衡へ
―激増する米国通貨供給のグラフ
―リスクが民から官へ集中
―金融(流動性)危機から財政危機へ
―恐怖から不安へ
―ディレバレッジ(レバレッジをかけない傾向)
―原点回帰
―投資スタンスもじっくりこつこつ長期で

これらのキーワードを使えば、今マーケットに起こっていることは、このように表現できようか。

出口戦略により経済政策が有事対応から平時対応へ切り換わるにつれ、財政出動のステロイド効果も切れ始めつつある。景気の最悪期は脱したものの、米国雇用統計の毎月の振れは大きく、いまだ不安定。W字型の二番底までゆかなくても、経済がダラダラと長期低迷する可能性がある。そして、有事対応の経済政策のツケともいうべき膨大な財政赤字が懸念される。金融危機は脱したが財政危機が影を落とす。ギリシア問題を契機に、マーケットも民から官へ集中したリスクに気が付き始めた。市場参加者の心理も、恐慌を恐れるような恐怖心理からは解放されたが、心の傷は消えず、金融システムや基軸通貨ドルへの不安が根強く残る。

ざっと、こんな感じになるが、ユーロ・ソブリンリスクに対する過剰とも言えるマーケットの反応を見るに、心の傷がやはり消えないことを改めて痛感する。

まぁね、男女関係にも似て、信頼しきっていた相手(銀行などの金融システム)に裏切られると、うぶな人(投資家)ほど、男性(あるいは女性)不信症に陥るものだよね。そうなると、相手のちょっとした挙動不審にも過剰に反応するようになる。「ほんとに、私は、この人についていって大丈夫かしら...」。疑い始めればキリがない。

さて、話題はガラッと変わって、英国の経済誌に「長寿スワップ=longevity swap」の記事が載っていた。人間の寿命が延び、人々が想定外の長生きをするようになると困るのが年金基金。(年金の払いが増えるので、年金は長寿リスクを負っているのだ)。逆に、長生きしてくれて助かるのが、生命保険会社。(保険金の払いが減る)。

そこで、人間の寿命が予想より延びてしまって増える年金の支払い分を、誰かが肩代わりしてくれたら、年金基金の台所も助かるというもの。でも、この世知辛いご時世に、そんな慈善団体みたいなところがあるはずもない。でも、その肩代わりの約束してくれれば、保証料として、ある一定のおカネを払いますと言えば、敢えて、その長寿リスクを自分が引き受けてしんぜようという御仁が、この広い世の中、いないとも限らないのだ。

そこで、長寿リスクを第三者に転嫁するスワップ取引が成立する。このスワップ取引は、長寿社会の中で成長業種らしく、すでに業界団体まで出来ている。その略称がLLMA=Life and Longevity Markets Association=長寿マーケット協会。金業界の人たちならピンとくるよね。LBMA(London Bullion Market Association)=ロンドン金地金協会。

その金価格に話題を移せば、他の商品ほどは大崩れせず、しぶとく粘って1050ドル近辺をキープしている感じかな。ユーロ圏のソブリンリスク=ユーロ売り=ドル高で、商品全体が売られたが、もし本当にソブリンリスク=国債の格下げとか債務不履行がやばくなれば、信用リスクが高まるわけで、これは金には買い材料。(景気後退=他の商品には売り材料)。

だから金は、今回に限って、投機筋から見れば、売り込みにくい商品だ。でも、年初の御祝儀買いで上がった後は、下げに転じているので例のポールソンの新ゴールドファンドは、出鼻を挫かれた様子。組成最初の一か月=2010年1月のリターンがマイナス14%。まぁ、同ファンドは、ヘッジファンドにしては、じっくり構えて金を保有しているようだから、あたふたはしないだろうけど。

ちなみにポールソン氏に引き抜かれたのが、本欄の昔からの読者なら覚えているはずの 元UBSの売れっ子コモディティー・アナリスト、ジョン・リード氏。筆者の友人でもあり、一昨年、京都でLBMA総会が開催されたときに、日経マネー金別冊の巻頭用に日本庭園のきれいな京都料亭で対談したっけ。あの京都会議でも、断トツで「スピーカーNo.1」に選出されていた。その彼が、いまやポールソンのファンドのブレインとなった。以前は、FTの金関連記事と言えば、まずは彼のコメントが載ったものだが、いまや全くメディアには現れず。メガ・ファンドの奥の院に、どんと構えているようだ。コンプライアンスで、公には語れないポジションなのだろう。

彼は、とっても真面目な人物だが、微笑ましいエピソードもある。日経マネーの対談中に 日本庭園をバックに撮った写真を記事とともに自宅に送ってくれという。息子さんが、パパの写真見て喜ぶので、と、はにかみながら語っていた。実はポールソンも派手というよりは地味な性格なので、ウマがあったのかも。相場師などと言われる人の実態は、意外に静かなキャラなのだよ。

(最後に食のレポート)
日曜にスキー場でストレス発散して滑り込んだ後の月曜日となると、カラダはまだスポーツモード。昼はムショウに濃い味のどんぶりものが食べたくなり、ミッドタウン名物、半熟玉子と地鶏の「究極の親子丼」をペロリ。それだけでは物足りず、事務所近くの青山墓地脇にある隠れ家的なケーキ屋さんで、抹茶ムースなど、ケーキ三品。連れの知人は、豊島さんに付き合っていると体重が増えると嘆くが、本人の体重は一向に増えず。血糖値だけ増えそうでやばいけど、ま、スキーでアウトプットしている分には、そのリスクも分散される。夜は、我が家の名物、御台所様手作りのシーフードカレー。海老の頭のミソをベースにしたカレーが激ウマ。スキーで健康的に疲れたカラダの隅々に沁みる味。今朝もそのカレーを食べながらブログ書いている。一晩おくと、また味が馴染んで良いね。カレーに凝ってインド旅行したり、自分でカレー店まで経営している森下千里さんにも食べさせたい。