リーマンショック5年

Page1467 リーマンショック5年

2013年8月26日

今朝の日経朝刊一面トップ記事が、「混沌の先、リーマンショック5年」という見出しだったので、筆者のブログを読み返してみたら、2009年9月9日に以下の原稿を書いていた。内容は殆ど今と変わっていない。金価格の数字が違うだけだ。
以下引用
現在の金価格を見るに、商品(コモディティー)としての需給要因から乖離し、金融商品として売買されるマネーとしての側面が強まっている。そこで今後の金価格を占う上で重要な点が「出口戦略」の成否であろう。その関連で米国債券市場の動きが金価格の趨勢に影響を与えそうだ。
まずは、このグラフをご覧いただきたい。(出典:米セントルイス連邦準備銀行webサイト)

1467.gifFRBのマネタリーベースという市中への通貨供給の源となる統計数字が、2009年に入って激増している事実が鮮明に見てとれる。
FRBによる国債など各種債券買い取りの対価として、民間銀行がFRBに持つ口座に振り込まれた金額が含まれる。この金額を元手に民間銀行はその数十倍もの融資を行うことができる。

こうして、「経済有事」の中で、マネーが市中に氾濫した。しかし、有事が平時に移行する過程では、その過剰なマネーをFRBが吸い上げる必要がある。これが、いわゆる「出口戦略」だ。この成否が与える金価格への影響とは。
◎まず、バーナンキが首尾良く出口戦略を成功させた場合。
過剰な資金供給は解消され、順調な景気回復とともに金利が徐々に上がってゆく。いわゆる良い金利上昇。米国ドル短期金利の指標となるFFレート(政策金利)もゼロ金利から脱出する。金利がつかない金は資産として売られる。
◎次に、出口戦略に失敗するケース。
まず、早まって市中のマネーを回収してしまう場合。せっかくの景気回復に水を差す結果となり、ただでさえデフレ懸念がくすぶる中でデフレスパイラルに陥る可能性が意識される。このケースでは、当初はFRBの金融引き締めへの転換、利上げ観測がマーケットを震撼させる。株も金も売られる展開となる。しかし、デフレスパイラルが進行すると、破たん信用リスクが急激に高まり、VIX指数(別名恐怖指数)が上昇する中で、安全性を求めるマネーが金市場に逃避することとなる。金価格はV字型を描く。
◎対して、出口戦略が後手に廻る場合。
これは一転してマネタリーインフレ招来のケースとなる。市中に溢れたマネーが放置され、過剰流動性となり、マーケットで暴れ、資産価格が上昇する。株にも商品にもリスクマネーが戻って同時上昇するだろう。ドル過剰供給はドル価値の希薄化をも意味するので、金価格上昇に拍車が掛かる。
このように出口戦略の成否は金価格にとって大きなインパクトがあるのだ。どのシナリオになるかは、バーナンキの微妙な舵取り次第。筆者の見立てでは、失業率が10%に接近し、雇用なき成長に対する国民の不満が高まると、どうしても出口戦略が後手に回りがちになろう。とくにバーナンキは民間の学者の頃、ヘリコプターベンの異名を取り、デフレには空からおカネをばら撒けと言って憚らなかった人物。
FRBが「通貨価値の番人」として、どこまで独立性を守れるか、ということも重要だ。バーナンキを再任命したのはオバマである。ホワイトハウスの景気重視圧力に対して、果たして独立でいられるのか。マネーを吸い上げるというのは、結局、国民に痛みを強いる政策なので、政治的には選択しづらいものだ。
出口戦略は政策論議であるが、マーケットは直接的に米国債入札動向など米国債券市場の動きにも注目する秋相場となりそうだ。
なお、金価格1000ドル突破にあたり、筆者の欧米の友人二人の見方を紹介する。
◎USBコモディティーアナリスト、ジョン・リードは来年にかけて1200ドル。
◎GFMSのCEOポール・ウオーカーは、目先弱気で需給要因により反落と見るが、その後再び高値トライを予測する。

引用終わり
その後、ジョン・リードはヘッジファンドのポールソンのおかかえになって、大規模な金買いの指南役になった。ポール・ウオーカーはGFMSを辞めて独立した。10月に来日するとのことで、彼とパネル・ディスカッションする企画が進行中だ。お互い、本音で語れる身になって初めてのガチンコなので楽しみ。
他にも、アベノミクスの影響なのか、今年な夏休み期間中も仕事が多かったと書いてきたけど、ボチボチ、メディアに出始めた。
今週号の日経ヴェリタスでは「マーケットのプロに聞く、今こそ読みたいお薦め この一冊」という企画で、澤上さん、中空麻奈さん、高田創さんと、読書について語っている。私のは、キンドルバーガーのInternational Economics と シェリル・サンドバーグのlean in. それぞれ初版が1953年と2013年という新旧の良書。
今朝の日経朝刊の27面では、「景気減速でも、金生産の7割を買い占める中国・インド」という原稿掲載。
昨日発売の日経マネーでは、「豊島逸夫の世界経済深層真理」コラムで、「世界3地域の事情で読み解く9月危機の実相」。9月リスクとしたのだけど、見出しは編集部がつけた。
明日発売の週刊朝日には資産としての金に興味持つ人になぜ女性が増えたか、という記事で、あれこれ語っている。
8月28日の朝日新聞朝刊(地域によってズレはあり)では、女優の村井美樹さんとの対談掲載。朝日新聞の女性向けウエブサイト「朝日新聞デジタル&w」でも掲載。日経も朝日も女性読者を意識したページが増えたね。
今日は、午後に丸の内のブルームバーグで機関投資家向けセミナー。
9月には、日経CNBCの企画で、ニューヨークに行き、NYMEXのフロアーでジム・ロジャースと対談予定。丁度、現地ロケと彼のNY出張のタイミングが合った。
他にも、インド現地ロケとか、色々パイプラインに詰まっているよ。