改憲議論の本気度を試す防空識別圏で

Page1528 改憲議論の本気度を試す防空識別圏で

2013年11月29日

欧米ファンド・年金基金は日本株投資の「チャイナ・リスク」をかねてから懸念材料として意識してきた。
その「チャイナ・リスク」は、今や「靖国参拝の有無」より「防空識別圏」が意識される事態となった。
筆者がウォール街で会う欧米投資家の多くがアベノミクスの「アキレス腱」として「改憲議論」「安倍首相の右傾化」を挙げる。
彼らの「歴史認識」では「ドイツがヒットラーを称賛するような行動はとらない。しかるに、日本の政治家の一部には、そのような発想が透けて見える」ということになる。
安倍首相が「防空識別圏」をテコに「改憲議論」を進め、アジア周辺国との政治的摩擦を強めるのではないか、との懸念が欧米で浮上しているのだ。

欧米投資家が日本株へのアロケーションを増やしつつある今、アベノミクスの「チャイナ・リスク」が「アベ・リスク」に変わってきた。
この「アベ・リスク」はオバマ政権も「防空識別圏」問題に関して悩ましく感じている点であろう。
米国側の究極の目的は、アジア地域の安定化であり、中国との領土問題も尖閣はそのひとつに過ぎない。
ケネディー大使が日本の重要性を強調しても、米国にとって最も戦略的に重要な国は中国であり日本ではない。

中国が唐突に新たな防空識別圏を設定してきた究極の目的は、日本を守る米国の本気度を試すことにある、との見方が欧米では浮上してきた。タイミングも明らかにオバマ政権の足元を見透かしている。目玉政策である医療保険制度改革でつまづき実施が延期され、ネジレ議会で「決められない」政権となり、求心力が国内外で急低下中という時期である。
そもそも、日本は、米中の太平洋上での覇権争いの「関ヶ原」のような位置にある。
特に、尖閣を制するサイドは、アドバンテージ(優越性)を得る。
そこで、さっそく中国は、同海域での存在感を示す行動に出た。
中国保有の唯一の空母「遼寧」を最大幅130キロメートルの台湾海峡を通過させ南シナ海に送ったのだ。
いっぽう、27,28日には沖縄沖で米原子力空母「ジョージ・ワシントン」を含む米海軍と海上自衛隊が「定期的」な軍事演習を実施している。
今後も、米国は、経常的に中国の設定した防空識別圏をパトロールすることになろう。
しかし、米国側がどこまで対中強硬姿勢を貫けるか。
米国の弱点は、中国が米国債1兆2938億ドルを保有して「人質」にとっていることだ。
日本も1兆1781億ドルの米国債を保有しているが、共同戦線を張る「安定株主」である。

中国とアジア周辺国との領土問題は尖閣だけではない。
「尖閣棚上げ」が日本にとっては現実的なシナリオであろうが、米国が「尖閣に領土問題は存在せず」との日本の基本的認識についての妥協を示唆するような事態も想定しておくべきであろう。
米中G2の思惑が優先する厳しい世界情勢の実態を国際金融市場最前線で感じている。

なお、明日土曜日昼12時すぎからのテレビ「マネーの羅針盤」に生出演します。テレビ東京とBSジャパン。
BSジャパンのほうが放送時間が長い。テレビ東京は前半だけ、という構成。テーマは金価格見通し。