国際金融アナリスト豊島逸夫※この原稿は2022年7月に執筆されたものです。MITSUBISHI MATERIALSスイス銀行で外国為替貴金属ディーラーとして活躍。独立後は金市場や国際金融などの情報発信を行うとともに“貴金属アナリストの第一人者”として尽力。投資初心者にも分かりやすい解説にはファンも多い。4国国内金価格が高値更新でも金が買われる理由内金価格が高値更新でも金が買われる理由 「有事の金」に「インフレヘッジの金」。金の説明には必ず出てくる表現ですが、陸の国境がなく、長いデフレに慣れた日本人にはピンときませんでした。しかし、コロナ禍とウクライナ侵攻で、その意識が激変しています。 戦争などの有事が他人事ではなくなり、有事に強い資産としての金が切迫感を持ち注目されるようになりました。さらに、バブルが弾けてデフレに近い経済状態が長く続き、物価が上がるインフレは死語になりましたが、コロナで一転、世界的に物価が急騰しています。さすがに日本でも、久しぶりのインフレに備える資産として金が再注目されています。 しかも、円建ての国内金価格は史上最高値を付けるに至りました。ここでのキーワードは何と言っても「円安」。金はそもそもドル建てで売買されるので、ドル高・円安が大幅に進行したことで史上最高値を大きく更新したわけです。 しかし、ここで個人投資家には大きな疑問が湧きます。「そんな高値で買っていいの?」と。もっともな疑問です。 答えを先に言えば、長期的には価格が上がるけれど、短期的には価格が変動する金のような投資媒体は、無理のない範囲で少額から毎月積み立てをしましょう。それを1年近く続け「かけ湯」のように慣れたところで本格的に金投資を考えても遅くはありません。史上最高値という誘惑的な言葉に舞い上がり、まとめ買いするのは賢明な判断とは言えません。有事の金とて同じこと。私は「有事の金のドカ買いは悪魔の選択」と諭しています。 中長期的に積み立てると言っても、金価格が徐々に上がっていかなければ成り立ちませんよね。ここでのキーワードは「金の埋蔵量」。既に陸の金鉱脈は開発され、これからは海底の金資源開発に挑まなければなりません。そうは言っても、金鉱石1トンから抽出される純金の量は2グラムもあれば御の字です。これでは金価格が10倍以上にでも跳ね上がらないと採算ラインには合わないでしょう。 この希少性こそ、金の価値の原点です。何があっても独自の価値を維持できる資産は、金以外に考えられません。「三菱の金」は、世界が認めたブランドです。三菱マテリアルが金の製錬に取り組み始めたのは明治29年のこと。その後100年以上の長きにわたり金地金を製造しています。ロンドン貴金属市場協会公認の熔解検定業者として登録マークである「三菱」を刻印し、永遠の資産を提供しているのです。
元のページ ../index.html#5