※この原稿は2023年6月に執筆されたものです。MITSUBISHI MATERIALSスイス銀行で外国為替貴金属ディーラーとして活躍。独立後は金市場や国際金融などの情報発信を行うとともに“貴金属アナリストの第一人者”として尽力。投資初心者にも分かりやすい解説にはファンも多い。国際金融アナリスト豊島逸夫■「三菱の金」は、世界が認めたブランドです。三菱マテリアルが金の製錬に取り組み始めたのは明治29年のこと。その後100年以上の長きにわたり金地金を製造しています。ロンドン貴金属市場協会公認の熔解検定業者として登録マークである「三菱」を刻印し、永遠の資産を提供しているのです。世界的な金融不安で金が買われる状況続く世界的な金融不安で金が買われる状況続く 2023年はドル建て金価格が歴史的高値圏で推移するなか、円安も手伝い、円建て金価格は連日のように高値を更新する展開になりました。何と言っても「世界的な金融不安」が効いています。米国や欧州では銀行の経営破綻が相次ぎ、インフレも収まりません。米国では財政赤字が累積し、米国債が債務不履行になるという最悪の事態を間一髪で辛くも回避した格好です。中国もコロナからの本格的な経済再開が期待されましたが、米中関係は習近平主席の独裁政治色も強まって危うい状況が続いています。 こうしたことが全て「金を買う理由」になっています。以前なら金が最高値を更新したとなれば金の保有者はこぞって売却に走ったものですが、今回は違います。新規購入や買い増しが多いのです。わたしはプロとして金の世界を40年以上見てきましたが、こんなことは初めてです。 日本でも地政学リスクが“自分事”に感じられるような出来事が増え、「有事に備える」という金の本来の意味が再認識されています。だから資産運用の一環として金を買っておくべきだと思う一方、「こんな高値で大丈夫なの?」と躊躇するのはある意味当然でしょう。そうした方には「まとめ買いするのでなく、今からでも少しずつ純金積立を始めたら?」と助言します。毎月、飲み会1回分程度の資金で金を定額で購入していくのです。いくらリスクに備えると言っても、有事だからと金を爆買いするのは「悪魔の選択」です。今はサラリーマンがNISA(少額投資非課税制度)で投資信託を積み立てる時代ですから、こうした話も理解されやすくなっていると思います。 ただ、これから積立をするなら長期的に金価格が右肩上がりであることが絶対条件です。この点に関しては「金の生産は今がピーク」ということがポイントになります。有望な金鉱脈は開発し尽くされ、世界の大手金鉱山は良い鉱脈を持つライバル会社を買収することで延命を図る時代です。このように有望な希少資源の金を奪い合う構図こそ、金価格が長期的に上昇トレンドにあることの証と言えるでしょう。
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