豊島逸夫の手帖

Page1717 個人投資家もヘッジファンドに勝てるワケ

2014年10月24日

リーマンショック後の超量的緩和からの出口を模索する過程は、未踏の海域における壮大な実験だ。その荒波にもまれたヘッジファンドが、もがき苦しみ、市場のボラティリティーを増幅させている。

今月中旬「IMFの世界経済見通し引き下げショック」の余波、そして「4Eショック」(QEのEnd, Euro圏経済不安、Energy原油急落、Ebolaエボラ熱)の追い打ちで、市場は総悲観(陰の極)に陥った。多くのヘッジファンドがNY株価先安を見込み、見切り売り、新規空売りに走った。11月ヘッジファンド決算期を前にした、最後の賭けともいえる動きであった。
というのは、今年のヘッジファンドのパフォーマンスは悪化。そのうえ、高いフィーに愛想をつかしたカルパース(米国最大の年金基金)が、運用対象からヘッジファンドを外す動きが顕在化した。米国でも保守的な年金業界は横並び意識が強く、カルパースが動けば、他の年金も追随する。危機感を強めたヘッジファンドは、決算期前の10月、必死にもがいているのだ。しかし、今月のパフォーマンスは、これまでマイナス2.6%(調査会社ヘッジファンド・リサーチ)に沈んでいる。

もがけばもがくほど裏目に出るのが相場の常。
先週、見切り、更に新規に空売りをかけたNY株は持ち直し。たまらず、23日には、損切り買戻しに動いた。
新規失業者申請件数が14年ぶりの低水準を維持し、キャタピラー社は好決算で買われたNY株。しかし、ダウ平均上昇を200ドル以上に増幅させたのは、ヘッジファンドの買戻しといえる。

更に、債券市場でも、彼らの裏目が続いている。
そもそも、年初、「2014年は量的緩和縮小の年ゆえ、10年債利回りは3%-4%へ上昇」というベースシナリオに従い、米国債売り攻勢をかけたのが、つまづきの始まり。その後のドル長期金利が瞬間的に2%を割り込むほどに低下するという展開は、全くの想定外であった。
更に、10月に入り、ヘッジファンドは、同じ誤ちを犯した。
9月米雇用統計が予想を大きく上振れする好転。市場では、一気に、早期利上げ説が主流となった。ヘッジファンドも、今度こそドル金利上昇と意気込み、再度の米国債売り攻勢をかけた。
しかし、その後の欧州発市場波乱の結果リスクオフとなり、安全性を求めるマネーが米国債市場に殺到。ヘッジファンドは、損切りの買戻しに殺到。その結果、米国10年債利回りが瞬間的に2%を割り込むという所謂「フラッシュ・クラッシュ」が起こった。

外為市場でも、ドル買い(円売り)ポジションを膨らませたところで、FOMC要旨に「ドル高懸念」が明記され、ブラード・セントルイス地区連銀総裁が「量的緩和終了延期」説を語った。ドルインデックスは急反落。そこで、ドル買いポジションを手じまったところで、23日、市場は再び大きくドル高に振れた。

16日本欄「4Eショックに揺れる市場」で「15日の"フラッシュ・クラッシュ"が、NY株とドルの売りのクライマックスであった可能性」を指摘した筆者から見れば、かくも後手後手に廻るヘッジファンドの動きは、とてもプロとは思えない。
しかし、決算期を目前にして、なんとか結果をださねば存在を問われるプレッシャーは、筆者とて、スイス銀行トレーダーとしていやというほど味わった体験でもある。
決算期にとらわれず、長期にポジションを持ち続けることができる個人投資家たちが、実に羨ましかった。
だから、個人投資家でもプロに勝てるのだ。
ところが、「決算期にしばられない」という強力な武器の威力を多くの個人投資家は認識していない。
今年のヘッジファンドの苦闘は、そういう個人投資家にとって良い教訓になると思う。

金価格は、昨日日経朝刊商品面にコメントしたごとく1250ドルの壁が当面厚い。円建て金価格は、ドル建てが上振れ下振れしても、あまり変わらない。やはり、円建てではプラチナに妙味あり。

今日の写真は、紅葉の裏磐梯、ボナリ高原ゴルフクラブ。
安達太良山の火口がすぐ真上にある迫力。

1987a.jpg1987b.jpgそして、私の業界での妹分であるシティーの尾河眞樹と為替対談。(日経マネー別冊に掲載予定)。家族ぐるみの長い付き合いなので、和やかな雰囲気。しかし、議論は厳しく、2015年円安の目途は?

1987c.jpg彼女とは11月にも日経CNBCのトレーダーズ・バーという番組で一緒に出演する。

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