豊島逸夫の手帖

Page1719 エボラ熱の影響でビール販売減の実例

2014年10月28日

昨晩からの日本でのエボラ関連報道にはヒヤリとしたが、あらためて、他人事ではないとの警鐘になった。
そこで気になることが実体経済への影響。
色々データを検索したところ、全米外食産業のポス・データを集めて検証している調査会社ゲストメトリック社が、ダラス地区での影響をプレスリリースで発表していた。
ダラスといえば、米国初のエボラ熱感染死者が出て、二人の看護婦の感染も確認されたところ。
結論からいうと、この地域での10月前半の2週間で、宿泊・レストラン・バーの売り上げは急減。対照的に、ファーストフードは微減にとどまった。品目別では、アルコール類が急減したが、非アルコール飲料の減少は限定的であった。

しかし、この影響は一時的で、10月第3週には、前月並みの水準にほぼ回復。ただ例外は宿泊であった。ダラス地区への旅行キャンセルが響いているという。
具体的データを見ると、バー・クラブの来客数が、前年同期比で9月の-6%から10月第1・第2週には-11%へ落ち込んでいる。
レストランは-4%から-9%へ、宿泊は+4%から-7%へ減少。対して、ファーストフードは、+1%から前年同期並みの水準を維持した。
品目別では、ビールが-4%から-10%、ワインも-2%から-6%へ落ち込んでいる。対して、非アルコール飲料は-3%から-4%の減少にとどまった。
その後、10月19日までの第3週には、総来客数が、-0.8%まで回復。宿泊だけが依然-7.5%と低迷している。
ここから推測できることは、発生当初は消費者心理も「ビールを飲む気にもなれない」気分になるが、その後冷静になれば、徐々に元に戻るということだ。
とはいえ、外出、特に旅行を控える傾向は続きそうである。

更に、今年のクリスマス商戦の盛り上がりにも影響を与える可能性が出て来た。
特に、量的緩和が終わろうとしているタイミングで、米国経済が過剰流動性依存から独り立ちできるほどに本当に回復したか否かが問われている時期である。

本欄で指摘してきた4Eショック(量的緩和のEnd、Euroユーロ圏経済不安の拡散、Energyエネルギー=原油急落、そしてEbolaエボラ熱)から、市場は徐々に立ち直りつつある。しかし、27日のNY原油価格(WTI先物)は再び80ドルを割り込み、ゴールドマン・サックスは来年の原油価格予測を75ドルに引き下げた。車社会の米国において、原油価格下落は「減税」に似た効果を持つが、一方で世界経済低迷を映す現象とも捉えられる。
ユーロ圏では、域内銀行のストレステスト結果が26日に公表され、事前予測どおり25行が不合格にされた。想定内とはいえ、9行がイタリアということで、欧州債務不安は依然くすぶる。
そして、28,29日のFOMCで、いよいよ量的緩和のEnd(終了)が決定される見込みだ。
この4つのEのなかで、現時点においては、エボラ熱の影響が最も不透明。ダラス地区の影響が短期的にとどまっているのも、「伝染が当面食い止められた」との前提つきである。

市場の期待感に訴える金融政策が採られているだけに、その期待感に冷や水をかけるような現象には市場も神経質にならざるを得まい。
外為市場でもエボラ熱が意識され不安心理から円が買われた結果、108円の大台回復を前に「なんとなく円高気味」である。株価も企業決算発表をテコに買いを入れたいところだが、ここにも「なんとなく不安」心理が働いている。日本株は結局、海外頼みの感が強い。しかし、その海外では、安倍内閣の「政治とカネ」問題が、先週から引き続き27日も「あらたな材料出現」で注目されていた。アベノミクス評価の大前提である「久しぶりの日本での安定政権」のイメージが揺らいでいる。エボラ熱と「政治とカネ」問題の同時進行は、シナリオになかった突発的現象ゆえ、当惑感が強い。
2014年の相場も第四コーナーを廻ったところで、思わぬ展開になっている。

さて、貴金属価格は、期待にこたえ(笑)プラチナが上がって、縮小していた金プラチナ値差が拡大してきた。
プラチナは17ドル急騰して1260ドル台。
金は4ドル下がり、1226ドル。
ドル円が膠着気味になってきたので、ドル建て貴金属価格の影響度が増している。

今週は、月曜から金曜まで対談やらセミナーやらで、連日飛び回ってます。
対談は、今、話題の女優さん(決まりで、まだ名前を明かせませんが)やら女性キャスターやら。これも、副代表の治部れんげ効果でしょうか。副代表のほうは、先週、衆院会館で「地方創生と女性活用」と題するパネルディスカッションやったり、地方公共団体の女性幹部向け研修講師やったり、昭和女子大学で1200人の学生に講義したりで、これも飛び回ってます。二児のママとしては「主夫」の協力なしではやってけませんね~

最後に今発売中の日経マネーコラム「豊島逸夫の世界経済深層真理」では、「雇用統計の読み方」について書きました。

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