豊島逸夫の手帖

Page1749 ハトはタカになれるのか。

2014年12月16日

考えてみれば、イエレン氏も、「貧乏くじをひいた」心境かもしれない。
緩和継続を主張するハト派の代表格が、FOMC内で利上げ時期決定の根回しに奔走する羽目になったのだから。
前任者バーナンキ氏は、「不景気になったらドル札をヘリコプターからばらまけばよい」と学者時代に語ったことから、ヘリコプター・ベンの異名をとった。
その、ばらまかれたマネーの後始末がイエレン氏に課せられた役割なのだ。

今週のFOMCでは、役目柄とはいえ、自らの主張に反する議論をとりまとめ、利上げへの道筋を明示すると市場からは期待されている。
しかし、せめてものハト派の意地を見せるかのごとく、米雇用統計好転に関する評価は辛口だ。
失業率・非農業部門新規雇用者増の二大指標だけでは不十分とする。平均時給・労働参加率・非自発的パートタイマー数などの改善なくして、真の「労働資源活用」には至らずと就任当時から述べてきた。
しかし、前回のFOMCでは、ついに「労働資源未活用が是正されつつある」ことを認める文言を声明文に盛り込んだ。
残るは、「相当期間、低金利継続」の文言だ。
この一節を削除するためには、もう一つのハードルがある。
それが、インフレ率低迷からの脱却だ。

FRBが重視するPCE(個人消費支出)デフレーターは年率1.7%と、目標の2%には届いていない。
「16~17日に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)までに、原油価格がさらに下落して60ドルを挟む攻防になれば、その功罪が議論されることになるだろう。産油量世界一であるロシアの経済危機というリスクも無視できない。」
9日付け本欄「原油価格、FOMCをも動かすか」にこう書いた。
そしてFOMC前夜。15日のNY市場で、WTI先物原油価格は55ドル台まで続落した。
イエレン氏は、これまでFOMC前の短期的市場変動は「ノイズ」として一蹴してきた。
しかし、今回ばかりは、「ノイズ」として切り捨てることは出来まい。
「成長重視」にバイアスがかかる現在のFRBだが、中央銀行本来の「物価適正水準維持」という政策目標達成も重くのしかかる。
今後の物価統計で、原油価格急落の影響が顕在化するのは必至だ。「変動の大きい食料品・エネルギー関連をのぞく」コア指数重視とはいえ、半年で40%以上の原油価格暴落ともなれば、その影響を切り捨てることはできない。
原油急落が物価低迷に追い打ちをかける状況に、利上げという爆弾を投じれば、どうなるか。
こんな声が、FOMC内ハト派からは聞こえてきそうだ。
おりしも、FOMCメンバーで「タカ派の両巨匠」とされてきたフィラデルフィア連銀プロッサー総裁とダラス連銀フィッシャー総裁が来年は勇退する。
ハト派優勢を誇示するかのごとく、11月米雇用統計予想を上回る好転が発表された直後の8日、アトランタ地区連銀ロックハート総裁は「相当期間の文言維持」を支持した。
いっぽう市場には依然「来年年央から後半にかけ利上げ開始」論が根強く残る。
とはいえ、外為市場はドル安・円高に振れている。ロシア経済危機懸念で安全通貨として円が買われるとの解釈だが、果たして、それだけだろうか。
「相当期間の文言維持。緩和継続」のケースも視野に入れたドル売り(円買い)の匂いも漂う。

ハトがタカになれるのか。
市場は今年最後のビッグイベントに向け臨戦態勢だ。

金価格は、ドル安の影響より、原油安に連れて下落。
今日に関する限り、円高でもあり、円建てでは安くなりそう。

さて、FOMC二日目の明日夜に日経CNBC報道番組で30分話します。↓

http://www.nikkei-cnbc.co.jp/program/newscore/

「Trader's Bar」同様に、数日後からUストリームで無料視聴可能になります。

 

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