豊島逸夫の手帖

Page1942 円高の背景にFRB理事の「反乱」

2015年10月16日

今回の円高は、中国発リスクオフと、米利上げ先送り観測の二つの要因が共振して生じた現象だ。逃避通貨としての円買いと、米緩和継続予測によるドル売りが同時進行した。

では、誰がドル売り・円買いに走っているか、といえば、トレンド・フォローのCTA(コモディティー・トレーディング・アドバイザー)と呼ばれる超短期売買専門のヘッジファンドの動きが目立つ。アルゴリズムに基づく高速度取引を駆使するので、8月24日に瞬間的ながら116円台までの円高を誘発したようなインパクトを持つ。

いっぽう、同じヘッジファンドでも、世界経済の潮流を読み中期的なポジションをとるグローバル・マクロ系は、ドル買い・円売りポジションを再構築するタイミングを狙っている。米利上げは先送りされても、早晩、実行されることは間違いない。単に、利上げ執行が数か月猶予されたにすぎない。リスクオフの円買いも、あくまでマネーの一時的逃避であり持続性に欠ける、という読みである。115円程度でドルの仕込みが出来れば御の字。117円程度で動くファンドもありそうだ。

市場環境として新たな注目点は、利上げを巡るFRB内部の不協和音。10月15日付けの本欄では抑え気味に「内部の亀裂」と表現したが、「内部分裂」とか「FRB理事の反乱」などの強い言い回しもNY市場では聞かれる。地区連銀総裁ではなく、イエレン議長側近のブレイナードFRB理事と、タルロFRB理事の両氏が、相次いで「利上げ先送り派」のスタンスを公の場で語ったことは、これまで見られなかった現象だ。これがイエレン氏体調不良の原因だったか、と勘ぐるFEDウォッチャーもいる。これまで市場は、FOMC参加者の金利予想分布を示すドット・チャートをもとに、ハト派・タカ派の票読みをしてきた。しかし、現時点の注目点は、9月利上げ先送りを支持したのは、誰だったのか、という面に移り、どうやら、FRB理事達らしい、という観測が強まっている。いっぽう、イエレン議長は、さきのマサチューセッツでの講演で、自らが「年内利上げ賛成派」であることを実質的に認めている。

側近の「反乱」で利上げが決められなかったということになると、イエレン議長のまとめ役としての指導力が問われ、信頼感が弱まる。これは、市場内での不透明感を助長して、リスク回避モードを強める要因にもなる可能性をひめる。

結論としては、今回のドル安・円高は、中期的なドル高トレンドからの一時的乖離と見られるが、FRB内の内輪もめにより、円高の期間が年末まで長引く展開も予想される。

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