豊島逸夫の手帖

Page2753 習近平「チャオ!イタリア」

2019年3月22日


22、23日と習近平夫妻がイタリアを訪問中。
主目的はイタリアの一帯一路参加に関する覚書の交換。


イタリア側は財政逼迫の折、中国主導のアジアインフラ銀行からの融資に期待。中国は一帯一路の要衝として、イタリアのジェノバとトリエステの二港へ出資。ジェノバからはフランス方面内陸部へ陸送ルートで直結。トリエステからはドイツ方面につながる。


更に、ファーウェイ社の5Gネットワークもイタリアは使用する。これは米国からの反発必至。
イタリア側でも中国企業への技術移転など警戒感は強いが、チャイナマネーが必要なので妥協する姿勢が透ける。
イタリアの学校に中国語講座を増やすなどの「文化交流」も進む。


イタリアの政局も混迷。極右と極左が連立を生むという異常な構図の中で、ベルルスコーニ元首相(82歳)が5月23日のEU議会に立候補することで政界復帰に動く。

一帯一路については支持基盤が北イタリアの「同盟」は植民地化を警戒するが、極左「五つ星運動」はメイドインイタリア製品の拡販チャンスと歓迎。連立政権に不協和音が生じている。

とは言え、財政赤字悪化で選挙公約の減税や年金改善がままならず、中国マネーは喉から手が出るほど欲しい。ジェノバの高速道路陥没事故をキッカケにインフラ老朽化懸念の声も高まっている。

EUはイタリアが中国からの借金漬けになることを警戒している。
スリランカが一帯一路に参加して借金返済できなくなり、港をひとつ中国に持って行かれる羽目になった事例もある。
中国の常套手段は、経済不安の国に「白馬の騎士」役で登場して「しんどいでしょう。なんなら融通しまっせ。」と持ち掛け、陣営に引き込む。


なお、イタリアはベルルスコーニ氏が未だに政治生命を維持していることが、なんとも不思議の国ではある。結局、不倫した清水次郎長みたいな感じで(笑)、スキャンダルまみれでも親分肌ゆえ慕ってくるファンは少なくない。「ベルルスコーニさんのためなら命を捧げる。」とまで言うファンが100万人はいると選挙調査会社が語っていた。選挙の勝ち方を知っているタフな人物という評価。まぁトランプ大統領だって二人の女性との関係が取沙汰されるのだから大した違いはないか。熱狂的支持基盤があることも共通点か。
こういう話を書くと、このブログがタブロイド紙みたいになるね(笑)。


そこで次は一転、金融政策問題。
注目のFOMCはほぼ本欄想定内の結果となった。
市場の年内利上げゼロ回をFOMCが追認。
FRB保有資産縮小は9月で終了。
縮小後のFRB保有資産規模は3.5兆ドル。


ただひとつ意外な点は、FOMCが来年1回の利上げを見込んでいることだ。市場では来年「利下げ」予測が台頭しているので、FRBと市場の見方が割れたことになる。
どちらが正しいのか。ここはまさに今後の「経済データ」次第で、FRBも市場も「忍耐強く」見守ることになろう。


FRBの経済見通しでは、声明文でひとつ「形容詞」の変化があった。strong(強い)からsolid(堅い)と弱めの表現になったのだ。今後のFOMC声明文でsolidが更に弱めの形容詞に代われば、FRBの次の一手は「利下げ」となろう。

とは言え、ウォール街ではパウエル時代に入り「FEDを疑え」が合言葉になっている。
今回の「年内利上げゼロ」は、あくまで現時点でのFOMC参加者の個人的見解の最大公約数に過ぎない。「堅い」と表現されたFRBの経済見通しが次回以降、再び「強い」に代われば、一気に年内利上げ機運が高まろう。


イエレン時代は「FEDに逆らうな。」と言われるほど、FEDへの市場の信頼も厚かったが、パウエル現議長は就任後発言がぶれる傾向があり、市場はその度に混乱してきた。
その結果、今回のFOMC決定もうっかり信じると次回以降に「ちゃぶ台返し」を食らうリスクが意識される。
「FRBのハト派姿勢」が市場に与える影響も賞味期限があるのだ。


この市場の懸念があるゆえFOMC後のNY株価が上がるかと思いきや、20日のダウ平均は141ドル安で引けたのだ。
FOMC声明文発表の約1時間前に、トランプ大統領が米中通商交渉について「たとえ合意後も追加関税は取り下げず。」と発言したことも効いた。


株式市場の視点では、せっかくパウエル議長が「緩和姿勢」を明確にしてくれたのに、トランプ大統領が冷や水をかけた感がある。
しかし、トランプ問題発言の影響は一過性だが、金利要因は日々のマネーフローにジワリと効き続ける。
21日のNY株価は素直にFRB発金利要因が米中政治要因に勝り、ダウ平均は216ドル急騰した。
但し、FEDを疑うヘッジファンドは「データ次第」で次のFOMCに先んじて動く姿勢だ。今後の経済指標が一転良い数字の連続となれば、FRBのハト派スタンスを無視して、利上げ臨戦モードに戻るであろう。冷静に今回の声明文を読み返し、パウエル議長の記者会見発言を反芻すれば、結局FRBも経済見通しには難渋して決めかねているのだ。それゆえ「忍耐強く」待つという表現を繰り返しているわけだ。


市場は先走り過ぎていないか。
既に「反省」モードも垣間見られるマーケットの最新状況である。


NY金は1300ドル台で頭が重い。更なる上昇には「利下げ」とか北朝鮮核実験再開などの要因が必要だろう。

ページトップ