豊島逸夫の手帖

Page2891 今年はびっくりポンの連続

2019年10月23日

以下は日経マネー先月号、連載コラム「豊島逸夫の世界経済深層真理」第90回の原文。

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マーケットの世界に40年以上の筆者でも、今年は「なにそれ!?」「ほんとに?」と、びっくりポンの日々が続く。

まずは、住宅ローンでおカネ借りると儲かる??という話。

デンマークの第三位の銀行(Jyske)が、10年満期ローンをマイナス0.5%の金利で提供。別のデンマークの銀行(Nordea)は、20年満期固定金利0%、30年満期で0.5%の住宅ローンを始める計画。

この10年満期のマイナス金利については、借り手が通常通り毎月返済するのだが、その返済額が借り入れ金額より減額される仕組みになっている。

なぜ、このような商品が組成可能なのか。

当該銀行は、マネー・マーケット経由でマイナス金利で資金調達が出来るので、そこで得たマイナス金利分のリターンを住宅ローンの借り手に、右から左へ渡すだけなのだ。

とはいえ、個人顧客に都合の良い話ばかりではない。

同銀行に預金すれば、今後、マイナス金利分の手数料を徴収される可能性がある。筆者の出身銀行であるスイスの金融機関では、預金に手数料が課されることは以前から当然のことだ。UBSは、50万ドル以上の預金に年0.6%の手数料チャージ開始を発表している。既に邦銀も検討中ゆえ、日本人にも他人事ではない。

なお、マイナス金利の住宅ローンでも、「別途手数料」を借り手は払う仕組みになっているので、まるまるマイナス金利分が儲かる、というわけではなさそうだ。とはいえ、今後、マイナス金利の深堀りが続けば、いよいよ「住宅ローンで儲ける方法」特集がマネー誌で組まれる時代になるのかもしれない。まさか、とは思うが、その、まさかが頻発しているマーケットゆえ絵空事とは言い切れない。

ちなみに、世界的低金利の中で、米国企業の社債起債も加速している。例えば、9月3日一日だけで米国債券市場で270億ドルほどの社債が発行されたという。農業機械のディーア社は30年社債を2.9%で発行。これは従来のディズニー社の記録3.2%を下回り話題になった。担当銀行マンに言わせると「超多忙な1週間分を一日でこなした気分」ということになる。債券市場は大繁盛なのだ。

次の、びっくりポンは、ギリシャの10年債利回り。ギリシャ危機のときは30%を超えていたが、いまや、なんとなんと1.5%!米国10年債とほぼ同水準。米国とギリシャに10年カネ貸すのに金利は同じとは、どういうことか。ちなみに、あのお騒がせイタリア国債がやはり10年物で0.8%、というのも奇怪な現象だ。

結論から言えば、今、欧州国債は債券投機筋による短期売買の対象と化している。この人たちは、満期まで持ち切る気は更々ない。単に安く買って高く売り売買差益を得ることが目的という投機家集団なのだ。この人たちの頼りはECB(欧州中央銀行)。早晩、量的緩和を再開することが見込まれるので、いずれECBが買ってくれるという期待が心の支えとなり、イタリア国債でもギリシャ国債でも買いに入るのだ。

安全資産とされるドイツ10年債がマイナス0.6%なので、いまや欧州国債は利回りがプラス圏にあれば、財政見通しにやや難あり、という評価になってきた。スペイン国債がプラス0.1%台で、当落線上にあると言えようか。

このマイナス金利拡大現象は、今後、ECBがラガルド新総裁のもとで、マイナス金利を深堀りすれば、更に進行することになりそうだ。いずれイタリア国債もギリシャ国債もマイナス圏突入という、まさかが、やはり、まさかとは言い切れない。

ちなみに、米国でも、早晩マイナス金利に突入の可能性が浮上している。あのグリーンスパン元FRB議長が、「米国もマイナス金利不可避」と断じているのだ。次の景気後退期に利下げ余地が2%以下しかないので、マイナス金利導入もやむなし、とのご託宣である。

2020年は、FRB、ECB、そして日銀が、マイナス圏での緩和競争を繰り広げることになるのか。

それこそ、一大びっくりポンである。

ちなみに、このマイナス金利現象の余波は金市場にも波及。

なんと、なんと、金利を生まない金が「ハイイールド」とされる仕儀となった。金はゼロ金利ゆえ、マイナス金利国債より高イールド、というわけだ。これこそ、金価格が今年記録的上昇を演じている最大要因になっている。「有事の金」ストーリーは派手だが一過性。おカネの流れを決めるのは、結局、金利。水が低きに流れる如く、カネは金利が高きに流れる。

それにしても、金の世界に生きて40年。まさかハイイールド呼ばわりされる日が来ようとは夢にも思わなんだ。。。。
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今日の写真はぼたんエビ。卵とかミソの部分を軍艦作りの鮨に入れて2回楽しめる。これは美味だね。

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