「投資」という使い方
Text by

松浦 弥太郎

Yataro Matsuura

なさま、こんにちは。

さて、自分のお金をどんなふうに使うのか。どんなふうに生かすのか。何に役立てるのか。少しずつでも、そんなふうに考える習慣を身につけてもらえたら嬉しく思います。いかがでしょうか。

前回は、収入の使いみちに「消費」と「浪費」があるとお話しました。今回は、それ以外に「投資」という使いみちについて考えてみましょう。

「投資」なんて自分にはまだ早い。そんな余裕がないと感じる方が多いのではないでしょうか。「投資」イコール損をするかもしれないというリスクを考えたりと。

常々私は、「投資」とは「栄養補給」だと考えています。言い換えれば「学び」と言っても良いかもしれません。「投資」とは、自分が豊かになる、さらに成長するためのお金の使いみちなのです。

たとえば、毎月の収入の中から、無理のない程度で、自分への栄養補給にいくら使おうかと決めてみます。一万円でも良いし、三万円でも良いのです。万が一、無くなっても大丈夫と思える額にしておくのがポイントです。

仮に一万円としてみましょう。さあ、それを「投資」という名目で使ってみましょう。使い方は自由です。ここで質問です。あなたはどんな使いみちを思いつきますか?

「投資」とは、必ずうまくいくとは限りませんが、お金を増やすための使いみち。確かにその通りです。しかし、「投資」とは、それだけではありません。英語を学ぶ。旅行に出かける。本を読む。映画を観る。アートに触れる。誰かとの交際に使う。新しい経験をするなど、自分の学びや成長というリターンのために使う「投資」もあるのです。

そう考えると、誰もが無意識的に「投資」をしているはずですね。そうです。「自己投資」という「投資」もあるのです。

これまで何気なくしていたことを「投資」という視点で考えてみる。そう意識的にするだけで、目的が明確になり、成果に大きな違いが出るのです。

はっきりと言っておきましょう。「投資」において一番リターンのある使いみちは、自分の学びや成長のための「栄養補給」とも言える「自己投資」なのです。それによって、良き「投資」というスパイラルをいかに生み出すのか。これこそが自分の人生を豊かにしていく栄養となるのです。そして、さらなる「投資」の道が見つかるのです。

前回お話した収入の2/3  を占める「消費」と「浪費」。そして残りの1/3の中から「投資」の額を決め、「投資」という名目で使い、「投資」を習慣化すること。とにかくそれが大事です。

もちろん、自己投資だけでなく、投資信託や株式投資など、いわゆるお金を増やすことにチャレンジしてもオーケーです。そのためにも、まずは学びや経験にしっかりと自己投資して、自分の知識を高めることが大切なのです。

おさらいしましょう。

「投資」とは、毎月、無理のない額を決めて、「投資」という意識を持って、自分への「栄養補給」という学びと成長のために使うこと。「投資」を習慣化し、さらなる新しい「投資」の道を見つけること。いかがでしょうか。

最後にもう一言。「投資」には、必ずリスクもあります。英語を習ってみたけれど身につかなかった。無駄になった。そんなこともあるでしょう。しかし、そのリスクよりも、「投資」をしないというリスクのほうがはるかに大きいのです。

次回は、「投資」について、もう少し踏み込んで考えてみましょう。

それではまた。

PROFILE

松浦 弥太郎/Yataro Matsuura
2006年から「暮しの手帖」編集長を9年間務め、2015年4月、クックパッド(株)に入社。同年7月に新メディア「くらしのきほん」を立ち上げ、編集長を務める。現在は(株)おいしい健康・共同CEOに就任。
「正直、親切、笑顔、今日もていねいに」を信条とし、暮らしや仕事における、たのしさや豊かさ、学びについての執筆や活動を続ける。著書多数。雑誌連載、ラジオ出演、講演会を行う。
中目黒のセレクトブックストア「COW BOOKS」代表でもある。