「バランス感覚を身につける」
Text by

松浦 弥太郎

Yataro Matsuura

なさま、こんにちは。

2月も終わろうとして、本格的な春到来です。すっきりした新しい気持ちで、仕事や暮らしに取り組んでいるかと存じます。

さて、日本経済は相変わらず、良いという人もいれば、落ちているという人もいるように、その変化は予測できず、不安定な日々が続いています。

そんな中、私たちが心がけておきたいこと、知っておきたいことは何か。今回はそんな話をしようと思います。

資産管理において、ポートフォリオという言葉があります。ポートフォリオとは、変動リスクを下げて、安定したリターンが生まれるように、投資商品を組み合わせることです。

今現在、投資商品を持っていなくとも、このポートフォリオを組むという考えは、これからの暮らしを守るために、ぜひ知っておきたいことのひとつです。すなわち、将来の備えとして、自分の人生または暮らしのポートフォリオをどのように組むかと考えてみることです。

まず考えるべきことは、ポートフォリオのために、自分はどんな銘柄を選ぶのか。これは人によって異なるかもしれません。たとえば、「時間のため」「お金のため」「仕事のため」「人間関係のため」といったものは必須でしょう。それ以外には「学びのため」「健康のため」「趣味のため」などもありますね。

基本的にポートフォリオというのは、何かが損失しても、何かが補うことで、全体の価値を落とさずに保つための組み合わせです。

実際の投資資産のポートフォリオではないので、あくまでも感覚的にイメージするだけでも結構です。

何が大切かというと、ひとつは自分の人生における資産は何か。それを考えて選ぶこと。もうひとつは、それらのバランスをどのように組むのか。「仕事のため」の割合を増やし、その他を低くした場合、万が一、「仕事のため」を失ってしまった時、その時の暮らしを守ってくれるものはありません。ある程度の「人間関係のため」の割合を守っていれば、「仕事のため」の損失を「人間関係のため」が補ってくれるかもしれません。

とにかく、何が起きても最小限のリスクでその状況を乗り越えるために、生きるための資産のバランスをしっかりと選んで、設定しておくのです。

そんなポートフォリオを作り上げたら、今度は「リバランス」という定期的なメンテナンスを行います。これは投資商品のポートフォリオについても同様の管理方法です。

誰しも年齢にともなうライフステージの変化が必ずあります。そのため、一年に一度で良いので、自分が組み合わせたポートフォリオのバランスの崩れを整えるための振り返りを行います。

たとえば、よく見たら、昨年は「お金のため」のリターンはあったけれど、病気などが見つかり「健康のため」のリスクが増えた。それなら、これからは「健康のため」の割合を増やして、その分「お金のため」を減らそうとか。

投資商品同様に、人生のポートフォリオでも、常にリスクとリターンのバランスを取るためのリバランスが大切なのです。

ぜひ一度、あなたらしいポートフォリオを組み立ててみてはいかがでしょうか。

それではまた。

PROFILE

松浦 弥太郎/Yataro Matsuura
2006年から「暮しの手帖」編集長を9年間務め、2015年4月、クックパッド(株)に入社。同年7月に新メディア「くらしのきほん」を立ち上げ、編集長を務める。現在は(株)おいしい健康・共同CEOに就任。
「正直、親切、笑顔、今日もていねいに」を信条とし、暮らしや仕事における、たのしさや豊かさ、学びについての執筆や活動を続ける。著書多数。雑誌連載、ラジオ出演、講演会を行う。
中目黒のセレクトブックストア「COW BOOKS」代表でもある。