お金の貯め方・使い方|資産運用 How to guide 007 | 2019.10.30
今注目の「実物資産」の両雄、 不動産投資と金投資を徹底比較!
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GOLD PRESS 編集部

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株式市場が不安定な中で注目される実物資産。
その代表的な存在が不動産と金です。
投資を検討している方もいらっしゃるでしょう。
そこで、今回は両者の運用資産としての特徴や運用リスクを比較しました。

「米トランプ政権vs.中国、イラン」の対立が長期化し、世界経済の先行きが一段と不透明感を増しています。各国が保護主義色を強めていることもあり、企業業績には期待しづらい半面、金利の低下で債券投資も難しい状況。そんな中、投資家の注目を集めているのが「実物資産」と言われる不動産や金です。

預貯金や株式などの「金融資産」に対し、実物資産は有形で、それ自体が価値を持ち、値下がりすることはあっても無価値になることはありません。貨幣の価値が下がるインフレに強く、株式とは異なる値動きをするため株式投資のリスクヘッジにも有効です(図Ⅰ)。

 

(図Ⅰ)

とは言え、同じ実物資産であっても、それぞれ運用商品としての性格やリスクの種類は異なります。そこで今回は、実物資産の代表格である不動産と金を比較してみましょう。

不動産投資はハイリスク&ハイリターン

不動産投資というとまず思い浮かぶのが、アパートやマンションなど賃貸用不動産を購入し、家賃収入を得る方法です。不動産はこのように所有しながら収益(インカムゲイン)を生み出すことが可能で、物件価格が高騰すれば値上がり益(キャピタルゲイン)も得られることから、相対的に大きなリターンが期待できます。
一方で、固定資産税や管理・修繕費用などランニングコストもかかりますし、物件の老朽化や家賃の下落、空室、さらには近年気になる自然災害など少なからぬリスクを内包しています。
「ハイリスク&ハイリターン」な運用先と言えるでしょう。

中でも気になるのが、初期投資が高額で場合によってはローンを組む必要があること、さらに、売りたい時にいつでも売れるとは限らないことです。運良くスムーズに売却できたとしても、代金を手にするまでに時間がかかるのもネックです。

とは言え、REIT(不動産投資信託)を利用すれば10万円程度からの投資が可能になります。REITは証券取引所に上場していますから、株式やETF(上場投資信託)と同じように売買できます。また、REITなら物件の管理や運用をプロに任せられ、安定した収益金を受け取っていくことも可能でしょう。

ただし、投資対象が不動産であることに変わりはなく、先ほどの家賃の下落や空室、自然災害といったリスクの影響は免れません。また、REITには現物による保証がないため、投資法人の倒産などで資産価値がゼロになることもあり得ます。

不動産より手軽な金投資、今なら狙い目は純金積立

では、金投資はどうでしょう。
金は不動産よりも「リスク資産」の意味合いが強く、金融資産が暴落した時に値上がりする傾向があります。不動産に比べると初期投資も少なくて済むためポートフォリオに組み入れやすく、登記のような面倒な手続きも要りません。

実物資産としてゴールドそのものを手にしたいなら、地金(バー)や金貨が良いでしょう。自宅に保管すればランニングコストはかかりませんし、いざお金が必要になった時には、国内外を問わず、換金化しやすいという利点もあります。

とは言え、金投資にもリスクは存在します。金価格は日々変動していますから、下落した局面では元本割れする可能性があります。また、金は米ドルで取引されるため、国内の金価格は円ドル相場の影響を受けます。具体的には円高になると下がり、円安になると上がります。

さらに、金では不動産のようなインカムゲインを得ることができません。現物を自分で保管する場合は、紛失したり、盗難に遭ったりする可能性もあります。
こうしたことから、不動産が「ハイリスク&ハイリターン」だとすれば、金は「ミドルリスク&ミドルリターン」と言えそうです。

金投資には毎月一定額を購入していく純金積立という商品があり、毎月3000円という小遣い銭程度からスタートすることができます。年会費や積立購入手数料などのコストはかかりますが、貯まった金は地金や金貨などで受け取れるため、前出のREITのような資産価値がゼロになるリスクとは無縁です。

2019年は金価格が歴史的な高値を記録したこともあり、地金や金貨は“高値づかみ”が気になるところです。しかし、純金積立なら「ドルコスト平均法」効果で平均購入価格が均等化されますから、購入のタイミングを気にせず始めることができます。

運用の世界において、株式だけ、債券だけといった「一極集中」が奏功するのはごく稀です。とりわけ昨今のように先行き不透明な状況では、ご自分のライフステージや資産状況に配慮しつつ、性格やリスクの異なる運用商品を組み合わせたポートフォリオで「資産防衛」しておくことが重要になります。

不動産や金は運用の“主役”ではありませんが、ポートフォリオ構築に欠かせない“陰の実力者”。それぞれのメリットやデメリット(図Ⅱ)を把握した上で、効率的に活用したいものです。

 

(図Ⅱ)

 

まとめ

Ⅰ.不動産と金は同じ実物資産であっても、性格やリスクには違いがある
Ⅱ.不動産は大きな収益が期待できる半面、リスクが多い
Ⅲ.金は利息を生まないが、手ごろな価格で始められ換金も容易

Text : 森田聡子
Illustration : ミツミマリ
Infographics:宮井智恵子