豊島さんに聞いてみた! 004 | 2018.09.27
ビットコインと金(ゴールド)の比較から学ぶ、
“小さく始める”投資の重要性
Text by

豊島逸夫×モリジュンヤ

Itsuo Toshima×Junya Mori

投資の専門家・豊島逸夫氏に、気鋭の若手編集者・モリジュンヤ氏が「投資の難しいこと」を伺っていく本連載。

第4回では、新たな選択肢として注目される「ビットコイン」の特徴から、どのように投資を始めたら良いかを学んでいきます。

※ビットコイン:インターネット上で使用できる仮想通貨の一種。取引量・時価総額が最も多く、2017年1月の1ビットコインの高値は約14万6千円だったが、同年12月の高値は約235万円に達するなど、大きな話題を生んだ。(Bitcoin日本語情報サイト:https://jpbitcoin.com/markets)

 

ビットコインで一攫千金を狙うのは危険な一面も

 

 

――ニュースで報じられることも増え、「仮想通貨」も投資の選択肢として注目されるようになりました。豊島さんは、仮想通貨をどう見ていますか?

仮想通貨の中でも、「ビットコイン」はこの数年でかなり知名度が上がっていますし、実際の生活の中で使用できる場面も増えてきましたね。例えば、ビックカメラやH.I.S.といった企業が決済手段として活用するなど、徐々に私たちの生活に身近な存在となっています。

仮想通貨を支える「ブロックチェーン」という技術は極めて有望で、長期的には仮想通貨を国が導入する時代も来ると思います。デジタル通貨という構想もあり、これからは「e円」の時代になるかもしれません。

――ビットコインをはじめとする仮想通貨は投資対象としても注目されています。

投資対象としてみると、24時間取引ができるなど従来の投資と比較して簡単にできるという特徴があります。しかし、まだ歴史が浅すぎることもあり、懸念もあります。短期的な投資と考えても、「ばくち」とも言えてしまいます。

特に、気を付けるべきはボラティリティ(価格変動)の高さです。一日のうち、午前と午後で価格が20%も変化したりする。これは、通常の一般の人の投資対象としては、あまりに変動が激しすぎると言えます。

――仮想通貨で儲けを出した人を「億り人」と呼びますよね。これもボラティリティが高いからこその現象かと思います。

そうですね。ただ、誰でも儲けられるわけではありません。ボラティリティの高い投資対象は、それだけリスクも高い。

お隣の人が、あるいは同僚が大儲けして億り人になったのに、自分は何もしていないと焦って手を出すのは最悪だと思います。投資の知識が無い人たちほど、億り人という「流行語」に心が動かされすぎないよう、注意が必要だと考えます。

――儲けようとして始めた人は、痛い目を見ることがあるかもしれないと。

そう。儲けようとして始めると痛い目を見るというのは、他の投資でも同じです。だから、投資対象をひとつに絞らず、小さく始めること。例えば、ボラティリティが高い仮想通貨に投資するなら、長期的に持ちやすい、値動きの少ない金(ゴールド)にも投資するとか。

 

 

 

金(ゴールド)と
ビットコインの違いは?

 

――なるほど。金(ゴールド)とビットコインは、どこが違いになるのでしょうか。

金(ゴールド)とビットコインは比較されることが多いんです。金(ゴールド)はビットコインと違い、実物を持っていたとしても、お店で何かを買うことができません。ビットコインはネット環境があれば、決済などに使用できます。取引のしやすさや、価値を交換するために使うのであれば、金(ゴールド)は不便です。

しかし、金(ゴールド)はこれまでにオリンピック公式プールの約3.5杯分しか採掘されていないという希少性があります。希少性が価値となり、無価値になりにくいのが特徴ですね。

――値動きが激しく、物質を持たないビットコインとは対照的ですね。

そうなんです。仮想通貨との違いを知ることで、金(ゴールド)のメリット・デメリットが分かりやすく見えてきます。人々の金(ゴールド)とビットコインに関する認識の違いも面白いんですよ。年末に「現在の価値が100万円相当のボーナスあげます。選択肢は以下の4つ。ビットコイン、金(ゴールド)、円紙幣、ドル紙幣。但し受け取れるのは10年後です」というアンケートをTwitterでとってみたんです。

――結果はどうだったんでしょうか?

金(ゴールド)が51%、ビットコイン20%、ドル紙幣17%、円紙幣12%という形になりました。

――金(ゴールド)を選ぶ人が多かったんですね。

はい。次は1週間後に、同じ質問で受け取るタイミングを「2018年1月1日」にしてみたんです。受け取りまでの期間を短くしたんですね。そうしたら、結果はビットコインが31%、金(ゴールド)29%、円紙幣22%、ドル紙幣18%になりました。

――期間を短くしたらビットコインが金(ゴールド)を上回った。

このアンケート結果に、ビットコインを見る人々の目が、如実に出ているんですよね。ビットコインは近いうちにもらえるなら値が上がりそうだけれど、10年後を考えると長い歴史がある金(ゴールド)を選ぶよねと。

――保存手段としての金(ゴールド)、交換手段としてのビットコインということなんですね。

そうなんです。価値の保存手段としてはやはり歴史のある金(ゴールド)が、価値の交換手段としては仮想通貨の方が優れていますね。仮想通貨は、まだ生まれたばかりです。だから、一攫千金狙いでビットコインだけに投資するのではなく、毎月数千円から積み立てられる金(ゴールド)などを組み合わせて、分散して投資を、とおすすめしています。

豊島さんの金言!
“金(ゴールド)は保存手段、ビットコインは交換手段として優れている”

Illustration : Damien Florebert Cuypers
Artist Management:Agent Hamyak

PROFILE

豊島逸夫
三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され、外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリッヒ、ニューヨークの投資最前線でトレーダーの経験を積んだ後、金の国際機関ワールドゴールドカウンシルに入り、投資事業本部アジア・オセアニア地域担当本部長や日韓地域代表を歴任。金の第一人者となる。
2011年豊島逸夫事務所を設立。独立後は、活動範囲を拡大。自由な立場から、日経マネー、日経ヴェリタス、日経電子版などで、国際金融、マクロ経済評論などを行う。
モリジュンヤ(GOLD PRESS Contributing Editor)
2010年に『greenz.jp』編集部に参加。その後、『THE BRIDGE』『マチノコト』『soar』等メディアブランドの立ち上げに携わり、テクノロジー、ビジネス領域を中心に複数の媒体に寄稿。
「inquire」という編集エージェンシーの経営や、オンライン情報誌「UNLEASH」の編集長、ミレニアル世代向けビジネス誌『AMP』の共同編集長、ライティングを学び合うコミュニティ「sentence」のオーガナイザー、NPO法人soarの副代表理事などを歴任。