豊島さんに聞いてみた! 002 | 2018.06.27
武器は「時間」があること。
ゆっくり待てば、個人投資家はプロにも勝てる。
Text by

豊島逸夫×モリジュンヤ

Itsuo Toshima×Junya Mori

投資の専門家・豊島逸夫氏に、気鋭の若手編集者・モリジュンヤ氏が「投資の難しいこと」を伺っていく本連載。

第1回では、少額から積み立てる投資の重要性を話しました。第2回は、プロと素人の投資家の違いを紐解きながら、投資を始めるうえでの豊島さんからのアドバイスを紹介します。

 

 

個人投資家「だけ」が持っている武器

 

 

――ずっとプロとして投資をされてきた豊島さんは、やはり負けることはほとんどなかったのでしょうか?

いえ、それが私がスイス銀行で12年間トレーダーとして、ドル紙幣や金(ゴールド)の売買をしていたときの勝率は「8勝7敗」くらいだったんですよ。

――なんとか勝ち越している、くらいの勝率だったのですね。

そうなんです。投資銀行でトレーダーとして働くようなプロでも必ず勝つわけではないんですね。だから、投資の経験のない個人が、いきなり大金をつぎ込んで投資するのは避けたほうがいいですね。

――プロで8勝7敗なら、投資を始めようとしている人はハードルが高そうですね

むしろ、個人投資家にはプロにはない強力な武器があるので、始めたほうがいいと思います。スイス銀行にいる間も、その武器がずっとうらやましかった。何か分かりますか?

――いえ、分からないです。

個人投資家の武器は、「時間」なんです。

――「時間」…ですか?

プロには決算期があるため、四半期や年単位の成果で評価されてしまいます。つまり、決算が近くなると、目先の利益を追ってしまいやすい。決算期に赤字だと、クビ同然ですから。

――個人投資家は、じっくり待つことができると。

はい。素人でもプロに勝てる方法は、待つこと。そういう意味でも「かけ湯」をするような感覚で、じっくりと投資に臨んで欲しいのです(※かけ湯に関しては、第1回「投資は『草食系』で始めよう。一度の飲み会代から始める投資」を参照)。

 

 

 

小さく始めてリスクに慣れる

 

――少しずつ投資を始めることで、プロにも勝てる可能性がある。それが分かれば、投資を始めようとしている人が、投資に対して抱く抵抗感も少なくなりそうです。

ただ、投資にも向き不向きはありますよ。誰にでも向いているわけではないんですよね。

――向いていない人とは、どのような人ですか?

小さな値下がりでもダメージを受けてしまうような人は向いてないと思いますね。例えば、昨日買った株式の価格が、次の日下がった時に目の前が真っ白になってしまう人。そういう人は、もっと人生が楽しくなることに時間とお金を費やして欲しいです(笑)。

――すぐ心配になったり、ストレスを感じやすいのに無理に投資をすることはない、と。

そうですね。ある程度、どっしりと構えていられる人のほうが向いているとは思います。やはり、胆力はあったほうがいいですね。

――胆力というと、体育会系でスポーツを活発に経験した人などは向いていそうですね。

そう思いますよね。でも、意外にも見た目やそれまでの経験だけでは判断できないんですよ。私のチームにラグビー部出身で体がたくましい男の子がいたんだけど、なかなか順調にいかなくて。トレーディングルームにいても、おたおたしているんですよ。

その傍らで、150cmくらいの小柄な女の子が非常に胆力がある子で、おたおたしている男の子を励ましていたりして。見た目は関係がないということが分かりました(笑)。

――見た目では分からないんですね…。でも、投資を始めるには胆力が必要と聞いて尻込みしてしまう人もいそうです。

最初から胆力があって、高いリスク耐性がある必要はありません。極度の心配性でなければ問題ないですよ。まずは、小さく始めて経験を積んでいけば、胆力も磨かれていきます。

――投資に慣れることで胆力も磨かれていくんですね。

はい。「時間」という個人投資家の武器を生かして、じっくり投資を行いながら、胆力をつけていきましょう。そのために、まずは小さく積立などから始めることをおすすめします。

豊島さんの金言!
“個人投資家は「ゆっくり待つ」ことで、プロにも勝てる”
“小さく始めて、経験を積めば「胆力」も磨かれる”

Illustration : Damien Florebert Cuypers
Artist Management:Agent Hamyak

PROFILE

豊島逸夫
三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され、外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリッヒ、ニューヨークの投資最前線でトレーダーの経験を積んだ後、金の国際機関ワールドゴールドカウンシルに入り、投資事業本部アジア・オセアニア地域担当本部長や日韓地域代表を歴任。金の第一人者となる。
2011年豊島逸夫事務所を設立。独立後は、活動範囲を拡大。自由な立場から、日経マネー、日経ヴェリタス、日経電子版などで、国際金融、マクロ経済評論などを行う。
モリジュンヤ(GOLD PRESS Contributing Editor)
2010年に『greenz.jp』編集部に参加。その後、『THE BRIDGE』『マチノコト』『soar』等メディアブランドの立ち上げに携わり、テクノロジー、ビジネス領域を中心に複数の媒体に寄稿。
「inquire」という編集エージェンシーの経営や、オンライン情報誌「UNLEASH」の編集長、ミレニアル世代向けビジネス誌『AMP』の共同編集長、ライティングを学び合うコミュニティ「sentence」のオーガナイザー、NPO法人soarの副代表理事などを歴任。