投資の専門家・豊島逸夫氏に、気鋭の若手編集者・モリジュンヤ氏が「投資の難しいこと」を伺っていく本連載。
第5回では、テクノロジーによって起きている投資の変化やその実態について触れながら、どのように投資を始めたら良いかを学んでいきます。
増加するフィンテックサービスたち |
――ビットコインなどもそうですが、最近はテクノロジーによって金融が変化しています。スマートフォンのアプリからお金の管理や投資ができるサービスも増えていますね。
そうですね。銀行口座の入出金や残高照会もアプリから可能になりましたし、毎日のおつりを自動で投資に回すことができるサービスなども登場しています。
――AI(人工知能)を活用した「ロボアドバイザー」といったサービスも登場しています。
AIが自動で資産の運用をしてくれるというサービスですね。投資を人間に任せるのではなく、AIに任せてしまおうという動きが進んでいます。
――AIによる投資というのは、現状の精度はどのようになっているのでしょうか。
AIによる投資は、当たることもありますが、外れている場合もまだ多いですね。ただ、AIが投資を担って外したのであれば、責任逃れもできます。AIをスケープゴートにする企業もいますね。
テクノロジーの進歩による懸念も |
――人間が担当していないから、外れた時の責任の所在が少し曖昧になっているんですね。
確かに、自動で売買してくれるので、投資を始める敷居を下げてくれたと思うのですが、いくつかの問題が出てきているなと。
――他にも問題は生じているんですね。具体的には、どのような問題なのでしょうか?
AIを活用した超高速な自動取引は、1000分の1秒を争うようなスピードで行われています。
――1000分の1秒とは、想像もできない単位です。
大手投資銀行では1000分の1秒という争いに勝つため、政治の街であるワシントンと、金融証券の街であるニューヨーク間で、どれだけ真っすぐな回線を引けるかを売り文句にしています。それは、大統領が何か声明を発表したら、すぐに市場へ反映するため。
つまり、ビルやスーパーマーケットなどの障害物で回線が曲がってしまうと、そのわずかなスピード差で負けてしまうんです。
――それだけの早さで取引が行われると、どういった問題が生じるのでしょうか。
例えば、政治的な出来事などが起こると、大口の投資家による売りがあります。すると、AIが瞬間的に反応して株価が一瞬で急落してしまうケースも見られるようになりました。
――フラッシュクラッシュと呼ばれる現象ですね。
はい。このような現象が頻繁に起こると、人々が市場の変化を信用しなくなる可能性もあります。それでは本当に大事な問題があった時に対応できませんから、海外ではAIの規制論も出始めています。
――まだまだAIは発展途上なんですね。
そうですね。AIはまだ未熟な存在なので、自分の目で見極める力を持つことも大切です。ただ、テクノロジーは投資に対する敷居を下げてくれたり、より便利にしてくれていることは間違いありません。少しずつ投資に触れてみて、理解を深めていくのは有益でしょう。
豊島さんの金言!
“AIはまだまだ未熟なので、投資の判断は自分の目で見極める力を”
Illustration : Damien Florebert Cuypers
Artist Management:Agent Hamyak