「お金を有意義に使う」
Text by

松浦 弥太郎

Yataro Matsuura

なさま、こんにちは。

前回は、貯金の仕方をお話しました。そうです。毎月コツコツと貯金をすれば、お金は必ず貯まるんです。

そこで、まずは貯金額300万円を一区切りにしてみてはいかがでしょうか。すでにもう貯まっている方もいるでしょうし、もう少しで届く人もいるでしょう。ゼロから貯金をはじめても良いのです。

貯金額300万円は遠いようですが、頑張れば無理ではない額です。そしてまた300万円という額は、貯金の楽しみを、これからさらに実感する額でもあるでしょう。

貯金が300万円になったらどうするか、を考えてみました。

300万円が貯まったら、欲しかった何かを購入する。もしくは、資産運用という方法を選んでみる。どちらも選択肢ですので、この機会によく考えてみることです。貯金ができた時とは、新しい選択肢という、価値ある学びをはじめる良い機会なのです。それが楽しいのです。

資産運用において知っておくべきことに手数料があります。手数料は常に金融機関と私たちの間に発生するもので、もし金融商品を買うのであれば、まずは「手数料の比較」をしてみてはいかがでしょうか。すなわち、すすめられるものは買わずに、納得できる金融商品を「手数料の比較」をして、自分で選ぶことが大事なのです。基本的に、銀行や証券会社がすすめるものは手数料が高いのが普通なのですから。

お金を増やしたい気持ちで金融商品を慌てて買うと、だいたい失敗してしまいます。それも学びの授業料かもしれませんが、もったいないものですね。ですので、慌てずに資産運用について、自分でしっかり学ぶことです。

「会計」「金融市場」「資産運用」「入門書」というキーワードで検索すると、どんな本を読んで学んだら良いかすぐに分かります。資産運用をはじめると、最初、誰しも大なり小なり失敗はします。その失敗を最小限に食い止めるためにも、本を読んで、資産運用の基本を最初に学ぶべきなのです。

鉄則は、自分で調べて、自分で考えることです。利益を得たい気持ちで、専門家や詳しい人を頼って、どうしたら良いかを聞いているうちは失敗してしまうでしょう。だからこそ、自分で調べて、自分で考えることが大事なのです。最初は練習と思って、少額の投資をしてみると良いでしょう。最初は300万円の1/5ほどからはじめてはいかがでしょうか。「売れ筋」に手を出したり、人の真似をしないことも大切です。だからといって、極端な逆行も禁物です。

実際に投資するしないは別として、10年持ち続けたい、株式の銘柄を10社選んでみてはいかがでしょうか。もしくは、持ち続けたい金融商品でも良いのです。それを考えるだけでも、かなりの学びが得られるはずです。

300万円の貯金を、あっという間に貯めることができる人は、そうそういないように、資産運用もすぐに結果が出て、すぐに儲かるはずがありません。株であれば、ひとつの基準として、5年以上は寝かせるつもりで投資するべきです。たとえば、自分が選んだ株式が、とても優良なものであるならば、一生持ち続けるのが理想なのです。そうしながら日々、経済ニュースに目を通し、株価や金利、為替などの変動のチェックを怠らず、お金について学んでいくと良いのです。

貯金が300万円貯まった時。それは、これから自分のお金をどのようにして有意義に使うのかを考える、または資産運用の基本をしっかり学ぶ、良きタイミングでもあるのです。

それではまた。

PROFILE

松浦 弥太郎/Yataro Matsuura
2006年から「暮しの手帖」編集長を9年間務め、2015年4月、クックパッド(株)に入社。同年7月に新メディア「くらしのきほん」を立ち上げ、編集長を務める。現在は(株)おいしい健康・共同CEOに就任。
「正直、親切、笑顔、今日もていねいに」を信条とし、暮らしや仕事における、たのしさや豊かさ、学びについての執筆や活動を続ける。著書多数。雑誌連載、ラジオ出演、講演会を行う。
中目黒のセレクトブックストア「COW BOOKS」代表でもある。