分かりやすいアドバイスに定評がある投資の専門家・豊島逸夫氏に、気鋭の若手編集者・モリジュンヤ氏が「投資の難しいこと」を分かりやすく伺っていく本連載。
第8回では、投資をする人に必要な知識の磨き方について豊島さんからのアドバイスを紹介します。
投資をすると世の中の情報が自分ごとになる |
――投資をするためには様々な知識が必要になるかと思いますが、知識はどのように取り入れていくのが良いのでしょうか。
投資のプロではなく、一般の人々は自分で少しでも身銭を切って買ってみるのが良いでしょう。実際に投資すると、価格の変動が気になるようになります。価格の変動要因は様々です。中国、ロシア、南アフリカの情勢など、世界の情報が必要になってきます。
――価格の変動に影響するグローバルな動きが関心事になるわけですね。
そうです。投資をすると、値動きに関係する事柄が自分ごと化します。例えば、株式を買う際は、投資しようとしている会社の業種や事業内容、社長の人柄などが気になります。会社の情報を調べると、成長しそうな会社が分かるようになっていくんですね。
産業自体の知識も入ってくるようになります。例えば、自動車産業であれば、自動車そのものについての知識はもちろん入ってきます。それだけではなく、自動車はサプライチェーンが世界にまたがっているので、部品はどこで作られていて、組み立てはどこで行われているのかなどの情報が入ってくるようになります。
会社単位のミクロな知識だけではなく、産業などマクロな動きも分かるようになってくるんです。
生活の役に立つ知識を蓄え、不安を和らげる |
――関連する事柄の知識が芋づる式に入るようになる、と。投資をし始めると、いろんな知識が蓄積されそうですね。
ただ、知識を何のために蓄えるかも大事なんです。ただ、儲けるためだけに知識を蓄積するのではなく、将来の自分の生活に有用な知識を蓄えたいですよね。
例をあげると、マネー雑誌などに出てくるのは「チャート」の見方です。株の投資家はチャートを頼りに投資をしていくので、チャートの上がり方や下がり方などの知識を身につけるんですね。
ただ、こうした知識は日常生活では役に立ちません。同じ知識でもテクニカルな知識ではなくて、「どういうニュースに注目すべきなのか?」など、ためになる知識を身につけましょう。そうすれば、景気の動きや世界で起きていることが分かるようになります。
――何が起きているのかが分かれば、将来に対する漠然とした不安などはなくなっていきそうですね。
投資には不安や恐怖心が生まれます。こうした不安の大部分は「分からない」ということに起因します。分からないから怖いと感じる。仕組みが分かると不安は少なくなります。知識を蓄えるというのは、不安を和らげることになるんです。
ストレスなく継続できる情報収集を |
――目的をもって知識を蓄積することの重要性をお話いただきましたが、情報収集を行う上で何かアドバイスはありますか?
気負いすぎないことが重要です。経済の知識を身につけるのは継続が大事なので、自分にストレスをかけすぎないこと。
例えば、新聞を読めば知識は身につきますが、量が多いため全てを読むのは大変です。何かひとつテーマを決めて、その話題を追うことから始めると良いでしょう。知識をコツコツと積み上げていく。
睡眠を削って時間を捻出するような努力は続きません。ワイドショーを観る、スマホでゲームをするといった、なんとなく過ごしてしまう時間があれば、その時間を勉強にあてましょう。無理しないで続けられる工夫が必要不可欠です。
――無理をしないで、継続できる状態で勉強することが大切なんですね。心構えについては何かアドバイスはありますか?
日々の値動きを気にしすぎないことですね。そのために一番良いのは、愛する人のための投資ですね。子どもや孫、配偶者のための投資をすると、日々の値動きがあまり気にならなくなります。
自分の生活のために投資はいけません。切羽詰まってしまうし、自分のためとなると人間は欲が出てしまいやすい。愛する人のためだと笑顔になります。笑顔での投資は違いますね。
愛する人のために投資をし、生活にも役立つ知識を無理せず蓄える。そうやって勉強しながら、「損切り」を学びましょう。損切りができるようになるまでに、3年は必要だと言われています。勉強しながら、小さな金額で損する経験を積む。そのためにも、かけ湯的に積み立てで投資をしていきましょう。
豊島さんの金言!
“投資の勉強は「無理なく継続」を意識しよう!”
Illustration : Damien Florebert Cuypers
Artist Management:Agent Hamyak