「最新で正しい情報を」
Text by

松浦 弥太郎

Yataro Matsuura

なさま、こんにちは。

お元気でしょうか。じめじめした梅雨も過ぎて、今年も厳しい暑さの夏がやってきました。決して無理せず、くれぐれも体調を崩さぬよう気をつけてお過ごしいただきたく思います。

つい先日、およそ二十年間、海外でファンドマネージャーとして活躍した知人と再会し、いろいろな話をした中で、ぜひみなさんにお伝えしたいと思ったことがありました。

それは仕事だけでなく、資産運用などにおける基本中の基本とも言える、情報認識のコツです。

みなさんは日々、新聞や雑誌、本、インターネットなどで情報収集していると思いますが、そこで知り得た情報を、価値ある情報としてどうやって認識したら良いのか。なかなか難しいことかと思います。

知人は、情報を客観的に認識し、整理するために、三つの次元で捉えることが大事だと言います。これには私も大いに学びを得ました。

まずは一次元情報についてです。これはデータや指数の発表といった何も加工されていない情報です。会社の決算なども含まれます。この一次元情報というのは、とても重要な割に、自分で意識的に取りにいかないといけない情報のため、観測されていないケースが多いです。主には政府統計局で様々なデータを発表していますので要チェックです。

次に二次元情報とは何か。それは新聞、テレビ、インターネットなどメディアを通して、専門家などから発信される記事や情報です。言い換えれば、誰かの意見という名の情報と言っても良いでしょう。この二次元情報は、一次元情報を伝わりやすく加工しているので、その傾向を知るためにも、常に誰が発信したかを知ることも重要です。

最後に三次元情報。一番大切な情報となります。これは自分自身による分析または理解です。二次元情報は加工されていますので、決して鵜呑みにしてはいけません。一次元情報と二次元情報を、自分なりに客観的に受け取り、一次元情報と二次元情報の差異や違いを感じ取り、「最新で正しい事実」を自分の頭で考えて発見するのです。

知人曰く、「最新で正しい事実」という情報は、誰かから与えられるものではなく、自分で発見するもの。だから価値がある。自分で発見することによって、情報の認識と整理が可能になるのです。

そしてもうひとつ。発見した「最新で正しい事実」という情報には、最後のひと手間があります。それは一度立ち止まって、その情報をあらゆるアングルから見て、考えることです。上からと下からも見る。右からと左からも見る。前からと後ろからも見る。このように複数のアングルから見てみることが大事なのです。

たとえば、一見ネガティブな情報もしくは出来事であっても、他のアングルから見てみると、とてもポジティブな情報もしくは出来事であることも考えられるからです。動揺したり感情が揺さぶられた時ほど、冷静に物事と向き合うコツとも言えるでしょう。

こうして収集した情報認識が何を生むのか。それはあらゆることに対する、かなり精度の高い仮説が浮かび上がってきます。分かりやすく言うと、未来予測が可能になるのです。これこそが真の情報処理であると、知人は教えてくれました。

こうした情報認識と整理を日々の習慣にすると、仕事や投資運用など、あらゆることにおける景色が変わってくると言います。ぼんやりしていたものがくっきりと見えてくるそうです。少なからず社会の著しい変化に対し、素早い対処が出来て、後手に回ることは無くなると。

さて、あなたが今、知りたい「最新で正しい事実」は何でしょうか。もし知りたい「最新で正しい事実」があったら、ぜひ一度、知人が教えてくれた、この情報認識と整理のコツを試してみてください。

情報は三次元で捉える。この方法がいかに役に立つか実感するでしょう。

それでは、また。

PROFILE

松浦 弥太郎/Yataro Matsuura
2006年から「暮しの手帖」編集長を9年間務め、2015年4月、クックパッド(株)に入社。同年7月に新メディア「くらしのきほん」を立ち上げ、編集長を務める。現在は(株)おいしい健康・共同CEOに就任。
「正直、親切、笑顔、今日もていねいに」を信条とし、暮らしや仕事における、たのしさや豊かさ、学びについての執筆や活動を続ける。著書多数。雑誌連載、ラジオ出演、講演会を行う。
中目黒のセレクトブックストア「COW BOOKS」代表でもある。