分かったつもりにさせない! 金融・投資用語 AtoZ Vol.4 | 2018.03.29
今、米国ETFが人気を集める理由とは?
金融・投資用語AtoZ “ETF(上場投資信託)[後編] “
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GOLD PRESS 編集部

GOLD PRESS Editors

 上り調子の指数と連動して
 価値を上げていく金融商品があれば、
 誰でも買いたくなるでしょう。

 そんな虫の良い商品なんて
 あるのでしょうか?

前編となる「ETFと投資信託の違いとは!?」では、投資信託という金融商品の概要と、その一形態であるETFについて解説しました。

今回はいよいよ「米国ETF」について、です。というのもここ数年、米国ETFが注目を集めているからです。

 

I. 米国ETFが注目を集める背景

いま人気を呼んでいるのは、「米国でつくられたETF」。その人気の秘密は「米国の株価指数に連動するETF」にあります。

ひと口に「株価指数」といっても米国には様々な指数があります。米産業界を代表する「ダウ平均株価(ダウ工業株30種平均)」、IT業界の動向を示す「ナスダック総合指数」、米国の主要な取引所から500の銘柄を厳選した「S&P 500」が有名です。

人気の米国ETFは、こうした株価指数に連動するようにして作られています。では、なぜこうした指数に連動していると人気なのでしょうか?その背景には、米国市場の好景気があります。

 

II. 米国経済の底力

1970年代末から現時点までのS&P 500のグラフを眺めてみましょう。


※クリックで拡大画像を表示します。

2000年に高い数値を達成した後、2002年にかけて下落、その後は2007年にかけてゆるやかに回復していきます。2008年9月にリーマン・ブラザーズが経営破綻し、金融危機が訪れると2009年3月までに指数は急落しますが、そこから現在にかけて急上昇している様子が見て取れます。

つまり、一時的に落ち込んでも5年ほどで回復し、元の数値を超えて上昇を続けているのです。上り調子の指数に連動して価値がどんどん上がっていく投資信託として、株価指数に連動する米国ETFが人気になっているのです。

 

III. 「長期保有」と「分配金の再投資」

米国株式が人気なのは、「米国の人気株式の短期売買でキャピタルゲインが得られるから」ではない、と前編で説明しました。では、どんな理由で人気なのでしょうか?言葉を入れ替えてみるとわかります。

「米国の人気株式」を「米国の株価指数に連動するETF」に、「短期売買」を「長期保有」に、「キャピタルゲインを得られる」を「インカムゲインを得られる」と入れ替えると、次のようになります。

「米国の株価指数に連動するETFを長期保有することでインカムゲインを得る」

この文章に米国ETFブームのエッセンスが詰まっています。これを紐解いていきましょう。

まず「米国の株価指数に連動するETF」が重要な理由は、最初に示したグラフに現れていますね。上の例はS&P 500ですが、こうして価値が上がっていけばいくほど、自分の投資信託の価値も向上していくのですから。

次に「短期売買」ではなく「長期保有」を採用する点について。現在の米国ETFブームは、20年ほど保有・買い増ししていく考えが前提になっています。その理由も先のグラフを見れば分かる通りで、持っている期間が長くなればなるほど、価値がどんどん増していくことが見込まれているからです。

最後に「インカムゲイン」です。これは金融商品を持っていることで生まれる現金収入を意味します。銀行預金では「利子」として、個別の株式では「配当」として、もしマンションを経営しているなら「家賃収入」として、投資家に現金で還元されますよね。ETFでは「分配金」という形で配当金を受け取ります。

こうして得た分配金は、生活や楽しみの糧にするのもいいでしょう。ただ、多くの投資家は分配金でさらに同じETFを買い増ししています。これには目的がありまして、配当金を再投資することによって「資金規模の拡大」を狙うのです。規模が大きくなればなるほど分配金も増えるのですから。このように、分配金の再投資で規模を拡大させてより大きなリターンを得ることを、投資用語では「複利効果」といいます。

そうやって積み立てた米国ETFは、リタイアしたら売却して生活資金にすることができます。また、数十年も積み立てると、分配金が毎月数十万円になっていてもおかしくありませんから、売却せずに分配金で不自由なく暮らしていくこともできるでしょう。

 

IV. 米国ETFのデメリット

良いことずくめに見える米国ETFですが、投資活動ですから損をする可能性もあります。では、どんなことに気をつけたらいいのでしょうか?

もしアメリカの株価指数に連動するETFを買うのなら、米国の政治・経済の動向いかんによって指数が急騰・急落する可能性があることを知っておきましょう。トランプ政権による内政の動向やFRB(連邦準備制度理事会)による金利政策にも目を光らせておくことが必要です。例えば、2017年末に税制改正法案が米議会で成立しましたが、これによって法人税が大幅に引き下げられますから、米国企業の税負担は大きく軽減されることになります。

また、超大国・米国の動向は世界に影響を与えるとともに、世界各国の動向も米国に影響を与えます。本稿執筆時点では、中東各国間の関係の変化(トランプ政権がエルサレムをイスラエルの首都と認めたことに端を発します)や、北朝鮮との外交の進展が影響を及ぼすとみられています。

楽観的には、そうした政治・経済の激動があってもなお米国の主要株価指数は短期間で回復し、長期的には価値を増していく、とも考えられます。それほど米国経済は強い、と考えられているため、米国ETFに人気が集まっているのでしょう。

 

V. 身近な「投資」から興味を持ってみよう

国内投資家ブロガーの様々な論考が、米国ETFブームを牽引しています。実践に裏打ちされた投資手法を楽しく、面白く紹介するブログを読むと、多くのファンがいるのも頷けます。

投資活動では損失が発生する可能性をゼロにはできませんが、米国ETFに興味を持ったら、彼らのブログを読んでみるといいでしょう。大いに参考になるはずですし、なにより、投資がぐっと身近に感じられるはずです。

 

Ⅵ. 様々なETF

さて、ひと口に「ETF」といっても、米国だけでなく日本にも実は様々な商品があります。

ダウ平均やS&P 500と連動するETFがあるのですから、TOPIX(東証株価指数)と連動するものもあるだろう、と推測できますよね。さらに、東証が分類した業種別の「TOPIX-17シリーズ」に連動するETF、例えばエネルギー関連に特化した「TOPIX-17電力・ガス」という商品もあります。

また、不動産が対象の投資信託を「REIT」と呼び、東証に上場しているREITは「J-REIT」といいます。ETFと同じように、証券取引所で売買できる投資信託なのですね。これにも「東証REIT指数」という指標があり、それに連動するETFも存在します。

また、金(ゴールド)、白金(プラチナ)、銀、さらには原油の価格に連動するETFなど、実に様々な商品があります。

東証のウェブページには、上場している銘柄の一覧が載っています。商品名を眺めているだけでも発見と驚きがあると思いますよ。

 

VII. まとめ

1 “米国の主要株価指数に連動するETFが人気を呼んでいる”
2 “背景には約10年に及ぶ米国の好景気がある”
3 “金(ゴールド)価格連動型など、多様性も大きな特徴”

文: 冨田秀継
Words: Hidetsugu Tomita

イラスト: ニッパシヨシミツ
Illustration: Yoshimitsu Nippashi

インフォグラフィック: 金田介寿
Infographics: Kaiju Kanada

キャラクターイラスト: キムラみのる
Character Illustration: Minoru Kimura