マイナス金利の時代、株式や債券などのペーパー資産や通貨から、金をはじめとする実物資産へと投資の関心が移り変わってきています。 この機会に金投資をはじめようと考えている方も多いはず。今回は金投資をはじめるにあたって知っておきたい税金や法律についてご説明します。
金地金や宝飾品などを購入した時には、まず消費税がかかります。仮に現在の消費税率を8%として考えてみます。
一方、金を売却または市場売却受託サービス利用時にも消費税がかかります。売却または市場売却受託サービスを利用した場合は、消費税分を含んだ金額が手に入ることになります。消費税率が同じときに売却または市場売却受託サービスを利用すれば、購入時の消費税額はプラスマイナスゼロで相殺されます。
現在、消費税率の引き上げが議論されていますが、消費税率8%の時に購入した金を消費税率10%になった時に売却または市場売却受託サービスを利用すれば、1gあたりの消費税抜きの店頭買取価格またはWeb市場売却受託サービス価格が税抜時価※と同じ場合、消費税率の差分2%が差額となって上乗せされることになります。
次に所得税です。金の現物を保有だけしている分には所得税はかかりません。しかし、金を売却または市場売却受託サービスを利用して金銭で返還を受け、利益が出た場合は、売却または市場売却受託サービスの利用による利益に応じて課税対象となります。
金を売却または市場売却受託サービスを利用して金銭で返還を受け、利益が出た場合は、取引の形態により「譲渡所得」、「雑所得」、「事業所得」のいずれかでの申告が必要になります。一般の個人が金を売却または市場売却受託サービスを利用して出た利益は原則、譲渡所得として課税されます。金地金を営利を目的として継続的に取引を繰り返している場合の所得は、雑所得または事業所得となります。例えば、年間の給与収入が2,000万円以下の給与所得者の場合には、他の雑所得と合わせて年間20万円までは 申告の義務はありません。
なお、申告が必要となる場合、保有期間に応じても課税方法が変わってくるので注意が必要です。 まず、保有期間が5年以内の場合は、売却または市場売却受託サービスを利用して出た利益から特別控除分の50万円を差し引いた金額が課税対象となります。一方、5年を超えている場合は、その50万円を差し引いた金額のさらに半分が課税対象となります。つまり、5年を超えて保有して売却または市場売却受託サービスを利用した方が課税面ではお得ということになります。
また、金は投資商品なので利益がマイナスになる局面では売却または市場売却受託サービスを利用しないことがほとんどでしょう。しかし、まれに様々な事情から利益がマイナスになっても売却または市場売却受託サービスを利用しなければならない場合もあるかもしれません。その場合は、美術品やゴルフ会員権などを売却して利益が出ていれば、それらと損益通算することが可能になります。ただし、通算できる品目は限定されているので注意が必要です。
金も資産の一部なので相続を受けた場合には相続税、贈与を受けた場合には贈与税がかかります。相続の場合、死亡日時点の時価※を適用し評価額を算出します。 一方、贈与の場合、贈与が成立した日の時価※を適用し評価額を算出します。相続は死亡日が確定しているのでわかりやすいのですが、贈与の場合は日付があいまいになりやすいので贈与契約書を作成しておくとよいでしょう。
投資や資産運用をする方で、今一番関心が高いのは「金の取引では個人番号(マイナンバー)を提出する必要があるのか」ではないでしょうか。
所得税法では、金・プラチナ・金貨・プラチナ貨の売却または市場売却受託サービスを利用して金銭で返還を受けた金額が200万円を超える場合、売却または市場売却受託サービスを行った貴金属店がお金を渡したことを示す支払調書を税務署へ提出する義務が定められています。なお、その支払調書には個人番号(マイナンバー)の記入が義務付けられています。
金は安全資産と呼ばれることが多く、「有事の金」と言うようにいざという時に備えるための資産という性格が強い投資商品です。売却または市場売却受託サービスを利用した際に課税される場合があることをあわせて考えると、頻繁に売却または市場売却受託サービスを利用するよりも、資産運用の中で安定したポートフォリオのひとつとして、長期保有を前提に考えるとよいでしょう。
次項では、「金・プラチナ・銀それぞれの特徴」についてご紹介します。