豊島逸夫の手帖

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金礼賛論 急増

2024年4月26日

「金に投資する人をあざ笑うのは簡単だが、彼らが報われる時がついに来たのかもしれない。」

今朝の日経新聞朝刊に「金高騰、世界の転換点示す」との見出しで、大振りのフィナンシャルタイムズ(FT)記事(日本語訳)が載っている。書き手はFTのグローバルビジネスコラムニスト。つくづく金を取り巻く環境が激変していると感じる。

これまでは、まさに金に投資する人を上から目線で冷ややかに見る傾向が強かった。金利も配当も生まず、金投資など所詮投機だというような風潮が強かった。金に投資する人は「gold bug(金好きの虫)」と呼ばれた。

それが昨年からガラッと変わっている。
但し、陰謀論的(トンデモ本のような)議論も依然残っており、ここは読む方が気を付けねばならない。「金を持っていればあなたは救われます」みたいな語り口に洗脳される投資家も少なくない。

それから金・銀・プラチナに関するコメントもその発言者の立ち位置を見極めねばならない。かつて筆者が属したワールドゴールドカウンシルは日本では金調査機関と紹介されるが、FTでは業界団体とされる。プラチナカウンシルも然り。シルバーインスティチュートも然り。筆者がそもそもワールドゴールドカウンシルを辞めて独立した背景には自由に発言したいとの思いがあったのだ。今だから言えることだが筆者は社内ルール違反の常習者であった(笑)。ゴールドにしてもプラチナにしても業界団体・販売促進機関が発する情報には必ず「色」が付いている。彼らが主催するイベントも曲者だ。下心が透ける。

証券会社に属するアナリストなども必ずハウスビューという自社の公的見解から逸脱してはならないという縛りがある。個人投資家はそこを割り引いて聞く或いは読むべきだ。
投資用金貨を発行する造幣局長などもPRエージェントの紹介で紙面に登場することがある。

そのような状況の中で、本音で金高騰の歴史的意味を論じるまともな記事が増えてきたことには勇気付けられる。報道するメディアの記者の「質」も厳しく問われる時代となっている。

私が独立して株・為替そして金と並列にマクロ的視点で論じているのも、読者に金に偏らずフェアな判断をしてもらいたいとの思いがあるのだ。

日経電子版マーケット面の「豊島逸夫の金のつぶやき」は、当日読まれたコラムのトップ5に頻繁に入るほど名物コラムとして定着した。このコラムの読者からは「豊島さんは、金にも詳しいのですね」と言われ、「ええ、まぁ」と照れながら頭を掻くこともしばしばである(笑)。「金のつぶやき」の金の意味は金言ということだ。

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2024年