豊島逸夫の手帖

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遺恨残す米財務長官人事、マスク氏は反対派

2024年1128

今日は米国感謝祭祝日。ドル円が円高に振れているがあれは休日前のポジション調整だよ。大騒ぎしているがむきになって見る相場ではない。

さて、以下はトランプ政策チームの内紛についての原稿。

ベッセント次期財務長官に関して、米主要メディアの様々な報道を読み、且つ、NY市場の現場の人たちとも意見を交わした。友人のジム・ロジャーズ氏は、同氏とインターン時代を共にしていたとのことで、さっそく連絡をとった。

それらの情報から浮かびあがるのは、ベッセント次期財務長官と、対抗馬であった実業家ラトニック氏が「犬猿の仲」であることだ。実際に「憎悪」とか「泥仕合」とまで表現され、更に、マスク氏がラトニック支持派に回り、公然とベッセント氏を批判した。マスク氏とラトニック氏は気が合う仲間のようで、様々なツーショットがメディアに流れている。これにはトランプ氏も、持て余したようだ。ベッセント氏も座視できず、ライバル候補たちがトランプ氏と面談している最中に、長時間、フロリダのトランプ邸に居座るなど、垂涎のポスト獲得に執念を燃やした。

結局、トランプ氏はベッセント氏を選択したものの、ラトニック氏には商務長官ポストを与えるという苦肉の妥協人事で幕引きとした。選考理由の一つとして、ベッセント氏のほうが、グレイヘアーで眼鏡をかけ、見かけが良いなどと語られる。トランプ氏のことゆえ、絵空事と言い切れないのが悩ましい。いずれにせよ、遺恨試合となるは必至で、今後のホワイトハウスの内紛・亀裂が懸念される。

このような実態だが、NY株式市場の現場の人たちは、「ベッセント次期財務長官指名」の報道で、まずは株買いに動いた。トランプ次期大統領と市場との蜜月期間は未だ続いているとの読みだ。更にベッセント氏は、自身の政策綱領に財政規律重視を掲げていることが一部では評価されている。しかし、トランプ氏はお構いなしに自らの都合(勘か、思いつきか)で動く傾向もあるので、次期財務長官も結局は「親分」には逆らえず、株買いの材料にするのは時期尚早と言わざるを得まい。

なお、日本人として興味深い話もあった。ベッセント氏がソロス氏の傘下で働いていた2013年のことだが、日本株で12億ドル、円売りで10億ドルを稼ぎ、運用手腕が認められたというウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事が送られてきた。

今後は、同氏にとって、日本が米国を除き断トツで世界最大の米国債保有国となる(2024年9月現在1兆1233億ドル)。マーケットのプロゆえ、大学時代副専攻の日本語を生かし、独自の人的ネットワークを通じ日本側の米国債売買状況をチェックすることもあるかもしれない。日本側からは、米国債保有をトランプ流取引の材料にちらつかせる可能性も考えられよう。本欄でも言及したことがあるが、故橋本首相が、訪米の際の講演で、日本が米国債を売る可能性に言及して、ダウ平均が急落した事例が想起される。利下げ開始後も4%超の高水準でドル金利が推移しているゆえ、石破首相がやんわり触れるだけでも米債券市場は反応するであろう。

2024年