2024年12月18日
ピーター・ナバロ氏と言えば、一期目のトランプ政権で対中関税など強硬な反中国政策の中心人物であった。トランプ氏の信頼が最も厚いスタッフとされる。
しかし、一期目ではムニューシン財務長官とコーン国家経済会議委員長との仲が悪かった。ナバロ氏は大統領執務室での熱い議論の最中に、コーン氏が足で蹴り上げる所作に及んだとまで語っている。
今回は財務長官と商務長官指名決定後、二期目の人事の最後にナバロ氏を通商関連主席アドバイザーとして指名した。最後に肝の人事を持ってきたかとウォール街では噂された。間髪入れず、対中60%関税案を大統領就任後、直ちに実行とは彼の策とされる。
同氏は議会乱入事件共謀の咎で収監されていたがほどなく保釈。その足で共和党集会に駆け付けていた。
その曰く付き人物が17日の米経済テレビに生出演した。FOMC前ゆえ話題は専ら関税がインフレ再燃を誘発するリスクについて。
ナバロ氏曰く「今回はベッセン財務長官というチェスの名人で金融のプロがいる。供給サイドのインフレは既に原油価格は75~80ドルから一時は50ドル台にまで下がった。緑の革命は風とともに去った。一期目の政権では財務長官との意見の相違が目立ったが今回は違う。需要サイドのインフレは膨張した財政赤字をFRBの量的緩和政策が賄った結果であった。今回はマスク氏率いる『政府効率化省』も発足したことの影響が大きい。」
この発言を聞いたウォール街の人たちは「あたかもマスク氏が生産性向上によりインフレを抑えるとでも言うつもりか。そもそも12月FOMC直前にFRBの量的緩和がインフレの元凶と言わんばかりの扱いはFRBへの政治的介入が当たり前との議論だ。もし関税がインフレを再燃させてもパウエル議長とベッセン財務長官に責任を取らせる意図が透ける。」と怒りのコメントが目立った。
なお、ナバロ氏はソフトバンク孫氏の名前を挙げ、我々の減税策と規制緩和策に共感した孫氏を始め、総額1兆ドルを米国に投資すると表明した。このような評価は米企業、特に中小企業の重荷を軽くするであろうとも述べている。
ワシントンの政局に詳しい人たちの間では、二期目のホワイトハウスのウエストウイング(西棟で大統領執務室があるところ)に閣僚の誰が入るかが話題になっているが、ナバロ氏が最側近の部屋を与えられるという説も流れている。
「関税は駆け引きの材料ではない」と明言しているナバロ氏の動向が市場でも注目されている。
英語を勉強したい人は参考資料インタビュー動画