豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 2025年、トランプ政権下、FRB「利上げ」も覚悟
Page4005

2025年、トランプ政権下、FRB「利上げ」も覚悟

2024年12月19日

4005.png

虚しい12月FOMCであった。記者会見で関税の影響について聞かれ「未だ政策の全容が分からない。何時、どの程度、期間は、報復関税は、など全て不明だ」と長めの陳述で応じた。FRBは政治的に独立しているが、実質的にはトランプ政策次第で利下げ回数なども大きく振れ、金融政策が迷走する可能性が露わになった。データ次第で決めるとパウエル議長は常々語るが、2025年はトランプ政策の影響を受けた経済データ次第ということになろう。

まずは1月20日大統領就任後、直ちに対中国、メキシコ、カナダへの新たな関税が発効する。トランプ氏が最も信頼する人物と言われる対中最強硬派ナバロ次期通商担当上級顧問が、FOMC直前のテレビインタビューで「関税インフレを心配する必要はない」と力説したが、トランプ2.0を取り巻く経済環境が既にインフレ基調ゆえ、一期目との比較は説得力を欠く(ナバロ氏インタビューについては昨日の本欄「対中最強硬派ナバロ氏、FOMC直前、関税インフレに一石」にて報じた)。トランプ次期大統領も関税と不法移民大量送還については、まず選挙公約実行ありきでその経済的影響は出たとこ勝負の感が強い。法人減税で財政規律が緩むリスクについても、経済が良くなれば税収も増えるという伝統的共和党思考は変わらない。

それゆえ市場もパウエル記者会見中から、ドル金利やドルインデックスが24時間グラフで棒上げ状態となり、株価も下げが加速した。金価格は2600ドル台を割り込み暴落した。

2025年のFOMCは参加者の金利予測もその時点でのトランプ発言に大きく左右され、会合ごとにドットチャートの形も大きく変わることになりそうだ。筆者が親しくしているNYのFEDウォッチャーが「私らの出番はなくなるかも」と力なく話していたのが印象的であった。NY市場最前線で働く気性が荒いトレーダーは「FRBがトランプに乗っ取られた」と興奮気味に語る。

2025年のFOMCではこれまでの体験は参考にならないどころか、判断を誤る要因になりかねない。インフレ再燃ともなればパウエル議長が利下げから利下げ停止、更には利上げへの転換に追い込まれる可能性さえ絵空事と片付けることはできまい。

米金融政策が強力な引き締めから緩和への歴史的転換局面の最重要時点で、トランプ大統領登場という流れは市場関係者に「クリエイティブな対応」を強いる。その市場自体もトランプ政権一期目に比し、超高速度取引とAIの影響が席捲するという構造的変化を遂げており、売りが売りを呼ぶ如き展開が目立ち、ボラティリティーも激しくなりがちな地合いだ。
地政学的リスクについても今回のパウエル記者会見で聞かれていたが「影響はある」と答えていた。

新NISA初心者組の方々もまずはシートベルトを低くきつく締め、「胆力」を鍛える必要がありそうだ。長期積立とは言え、市場の乱高下を冷静に見つめることができることは容易ではない。

金価格も2025年予想レンジの範囲内で乱高下することになろう。

2024年