豊島逸夫の手帖

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NY金、これからどうなる

2024年9月30日

NY金(中心限月12月)が2700ドルを瞬間タッチで上回った後、2670ドル台まで反落中だ。
大台突破で利益確定売りが出るのは想定内のことだが、中期的な相場の流れが更に上を目指すか、或いは2700ドルで目標達成感により一転下落傾向に転じるか。
筆者は2700ドル前後でしばらく揉みあった後で2800ドルを目指す展開を予想する。2025年には3000ドルも現実味がある。
米金融政策の利下げ継続と巨額の米財政赤字問題も、もちろん重要な問題だが、中国経済危機が制御不能の状況になりつつあることが、地政学的リスクの悪化を招くことが危惧されるからだ。

チャイナリスクは中国経済が弱体化した時に最も危険なレベルになるものだ。16歳から24歳の若年失業率が18%を超え、深センの街中には不穏な空気が流れる。地方政府の巨額債務も、もはや「大き過ぎて、手が付けられない」。軍事面では中国と同盟国とお互いに「瀬戸際作戦」で、台湾海峡や沖縄周辺を示威航海している。そこにロシアと北朝鮮がからむ。その時期に日米ともリーダー交代劇。中国政府は日本人児童殺害を「どこの国でも起きる偶発的事故」と切り捨てたが、地政学的リスクも偶発的な接触から一気に悪化するリスクを孕む。

世界的にこのような危うい状況の中で、投資マネーが「中央銀行が勝手に刷れない」金(ゴールド)に向かうのは必然であろう。中央銀行が外貨準備として金を買い増すのも「経済安全保障」を考えてのことだ。
ウォール街でも毎日のようにゴールドが話題になり、カリスマ投資家たちが金買いを推奨している。
金を大量に買っている人の中で超富豪たちのまとめ買いが目立つのも今回の特徴だ。その富裕層を顧客とする米国大手銀行からわざわざ筆者にNYまで来て金の話をしてくれとの要請。コモディティーアナリストと言っても、これまでは80%以上が原油の専門家でまともに金の話ができないのだ。「そういえば、東京のジェフはまだ現役で働いているから声をかけてみよう」と言う話になったそうだ。彼らと筆者の付き合いは1970年代から続いている。筆者のような存在は今や「絶滅危惧種」のようなものだねとジョークで返してやった(笑)。諸々、守秘義務があり詳しくは話せないがNYで金専門家育成にも関与することになりそうだ。

2024年