豊島逸夫の手帖

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日本株のタイタニック・リスクに備えよ

2024年9月4日

レイバーデー(今年は9月2日)3連休が明けると、NY市場は一気に秋相場に突入する。特に今年は金融政策の緩和への転換と米大統領選挙戦が同時進行するという極めて稀な市場環境となり、マーケット心理も特に神経質になっている。更に8月5日に日経平均が突如過去最大の下げを演じたことが、未だに不気味な事例として市場関係者の語り草になっている。「アジア先進国株」という株式カテゴリーが、新興国並みのボラティリティー(価格変動性)で乱高下したことは、米国株にも起こりうるとの認識だ。円キャリートレード巻き戻しの嵐に巻き込まれたヘッジファンドの間では「リメンバーパールハーバー」と日本人にとっては有難くない表現が飛び交う。
しかも9月第一週には連日重要経済指標発表が並び、そのトリが雇用統計。まさに8.5日本株ショックを惹き起こした重要統計だ。

「パウエルFRB議長を信じられるか」

折からFRBに対する疑念も高まっている。今回のインフレ発生時には一過性と読み違え、インフレ収束時点でも利下げ尚早或いは後手の痛恨エラーのリスクが無視できないのだ。市場の合言葉も「FRBには逆らうな」から「FRBを疑え」、そして「FRBと戦え」と先鋭化委してきた。利下げ発表初日は売りだ(Sell the first rate cut)と意気込むファンドマネージャーのつぶやきが市場心理を映す。最大注目点の失業率が更に悪化して、ソフトランディング(米経済軟着陸)のメインシナリオが崩れ、顕在化する不況の可能性がFRB利下げの要因となるとのシナリオが最も警戒されている。

このような緊迫感の中で米経済指標一番バッターとなったISM製造業景況感指数が47.2と好不況の節目50を5か月連続で下回った。既に中国経済不安でコモディティーセクターには売りが目立つ中で、ISM指数の影響も想定以上の強さでNY市場内に拡散した。売りが売りを呼ぶ波状現象は遂に本丸とも言えるエヌビディアも直撃。一日で時価総額が41兆円失われるという下げ幅の記録となった。
野球に例えれば、秋季リーグ第一戦1回表、いきなりの大失点だ。今後の試合展開が点の取り合いという大乱戦になるのか或いはワンサイドゲームで負け試合になるのか。
夏休みのリゾートで英気を蓄えてきたトレーダーたちも11月5日の米大統領選までの期間は「体力勝負」と覚悟を決め、早々とジムで汗を流し帰宅する人たちも少なくなかったようだ。
日本人の視点としては今や「仕手株扱い」で、しかも外国人売買比率が高い日本株市場にいつ攻勢をかけてくるのか気がかりだ。折から日本側は政権交代の真っ只中。円キャリー巨額損失のリベンジ攻撃に対する耐性は弱い時期である。
今年はこれまで護送船団方式に守られてきた日本株が構造改革を進める中で外海の荒波にもろに晒されている。日本株号という船の中には新NISA初心者という新たな乗客も多い。
日銀の金融正常化の動きは「氷河並みのスピード」と欧米市場では語られ、時に日本株はタイタニック号に例えられる。まずは日本丸のキャプテンは誰になるのか。振り返れば「毎年船長が変わる国」とのレッテルを貼られた時期もあった。
ウォール街で働き、親日派の日本株デスクが今の日本を見ていると、沈みゆく船内で「説明責任を果たせ」と乗客が騒いでいる如しと筆者に語った時、咄嗟に返す言葉がなかった。

このようなマクロ市場環境不安定な状況でNY金(中心限月12月もの)は乱高下を繰り返しつつ2500ドルの大台を維持している。他の資産クラスに比し、やはり「安全資産」として見做され、2500ドル台での利益確定売りをこなしている状況だ。歴史的高値圏ゆえ売り買い交錯している。年内2700ドル予測に変わりなし。

さて、札幌サテライトオフィスを引き上げ、いやいや帰京(笑)。ぶつぶつ言いながら、いきなり大荒れ相場になり否応なく仕事モードに戻った。3か月札幌の生活は良かったなぁ。
昨日は山形県鶴岡から「だだちゃ豆」が届いた。旨い!仕事しながら後引き一袋平らげてしまったよ。
3954.jpg山形県と言えばお馴染みマガーリ@自由が丘のマダムとシェフがまさに本日引っ越してゆくところが米沢市だ。お隣の福島県は私の第二の故郷。会津若松から車で1時間半くらい。実は札幌で壮行会をやったばかり。筆者ご贔屓の農園レストラン、アグリスケープのシェフを紹介した。マガーリの目指すところとなろう。この件は荒れ相場が落ち着いたら現地米沢からレポートするよ。

2024年