豊島逸夫の手帖

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NY金、2400ドル再突破、円154円台

2024年4月16日

16日朝の時点でNY金(中心限月6月もの)は、中東地政学的リスクに反応して2400ドルを再突破している。

12日金曜日には、やはり中東不安(イランミサイル発射前)で2448ドルまで買われたが、その後、同日に2350ドルまで100ドルも暴落していた。そこから2400ドルまで這い上がってきたわけだ。しぶとい。
中東リスクも、要はイランもイスラエルも米国も軍事衝突など望んでいないのだが、国内世論を忖度して強硬な言動を繰り返す。とは言え偶発的衝突がいつ起こっても不思議はない。およそ戦争は偶発的な事件がキッカケでエスカレートするものだ。
とは言え、金市場の視点では先週金曜日に最高値から100ドルも暴落した記憶が鮮明に残り、「うっかり手を出すと大やけどしかねない」との慎重論が根強い。
従って中東地政学的リスクの反応としても、一進一退を繰り返しつつ、レンジの下値を繰り上げてゆく展開になっている。

15日月曜日には、金市場に強烈な逆風も吹いた。
GDPの7割を占める個人消費動向を読む上で重要な経済指標である米小売売上高が前月比事前予測プラス0.2%のところ、0.7%と大きく上振れしたのだ。これは米国経済好調を示す「良いニュース」なのだが、FRBの利下げを期待している市場にとっては「好調な経済に利下げしたらバブルのリスクがある」ということで「利下げ後退を示す悪いニュース」となるのだ。今や2024年FRB利下げ開始時期予測は9月まで後ずれして、回数も「多くて2回」となった。年初は3月開始で年7回説を織り込んでいたから、これは劇的ちゃぶ台返しだ。金利を生まない金には強い逆風になるはず。
しかし、中東地政学的リスクによる有事の金買いが勝り、2400ドル台再突破となった次第だ。

それにしても米ドル長期金利は4.6%と高く、ドル相場も世界的ドル高基調だ。15日にはECB(欧州中央銀行)が利下げに積極的な態度を示し、ユーロ安・ドル高になったので、総合的ドルインデックスも106の大台を突破。ドル高の流れに拍車をかけた。
ドル高・ドル金利高は市場の法則において金安の材料とされる。しかし最近はこの法則に逆らう値動きが常態化してきた。
その結果、円安とドル建て金価格上昇が同時進行して、円建て金価格がここまで上昇してきたのだ。

但し、為替介入があれば147円程度まで一時的円高進行が見込まれ、円建て金価格は為替要因で下がるであろう。とは言え介入効果は長続きせず、そこは買いのチャンスとなろう。世界の為替市場の潮流がドル高に流れている時、日本だけが流れに逆らい、ドル売り・円買い介入しても、それは「アウェーの戦い」であり、財務省日銀に勝ち目はない。市場に次から次へと出てくるドル買い・円売りの注文を片っ端から為替介入で潰してみても、結果はモグラ叩きになるだけだ。日銀だって財務省だって優秀な人材が集まっているゆえ、そのくらいのことは分かっているはず。だからこそ152円でも153円でも為替介入に踏み切れなかったわけだ。

とは言え、今や投機的円売りポジションがとんでもなく積み上がっているので、そのドカ雪の自重で表層雪崩がいつ起きても不思議はない。筆者も相場モニター画面から目が離せない。

画像は昨晩「夢」に見た光景(笑)。

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2024年