豊島逸夫の手帖

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トランプでドル高かドル安か、金の動向に影響

2024年7月18日

ウォール街では既にトランプ当確を前提に議論が深化しつつある。
そこで円安と為替介入に話題を振ってみると意見は分かれる。
標準的シナリオとしては、2025年に失効するトランプ大型減税を維持。財政赤字が膨らみ、ドル金利には上昇圧力がかかる。財政政策要因のインフレ再燃となると、FRBは利下げどころか利上げ再開に追い込まれる可能性もある。外為市場ではドル高基調となろう。そうなると米国製品の国際競争力を強めるドル安政策を標ぼうしてきたトランプ氏は、日本金融当局のドル売り(円買い)介入を歓迎するかもしれない。
更に関税大幅引き上げに踏み切れば、やはりインフレ要因となり、ドル高に拍車をかける結果となろう。

中期的な視点では財政規律の緩みが米国債再格下げを誘発して、国際基軸通貨としての米ドルの信認が薄れるシナリオも考えられる。しかし国際決済システムに米ドルが組み込まれ、米国債市場も断トツの流動性を持ち、米国債は外貨準備には欠かせない。中露には気に入らない現実だが、誰が米国大統領になろうとも国際通貨制度における米ドルの優位性は変わるまい。日本側がドル売り円買い介入を続けても局地的な問題として「お構いなし」となりそうだ。
とは言え、介入で米ドルの優位性を変えることもできまい。その役割はあくまで「血止め」であり、痛みを伴う構造改革を避けて通ることは叶わぬ。日本の金融当局と国際通貨投機筋のせめぎ合いも固定相場制度から変動相場制度に移行した時点で短期的リスクとして覚悟してきたことである。

このドル問題はNY金にも直接的影響を与えるので、今後も論じてゆきたい。

2024年