豊島逸夫の手帖

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マネー米国集中、来年初には反動も

2024年12月10日

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今日は世界的マネーの流れについて、筆者が出張で感じたマクロの視点でまとめてみた。題して「マネー米国集中、来年初には反動も」。

NY勢の多くは米国株上昇トレンドを肯定しているが、短期的にはバリュエーションから見ても上げ過ぎの感が強く、来年1-3月期にはpull-back(反動)不可避との見解も根強い。これまでの米国株上昇は多業種に亘り、米国経済の底堅さを映す現象と言える。とは言えFRB利下げを当て込み、前のめり気味にmelt-up(何でも上がる相場)にエスカレートしている面も否定できないとの見解だ(メルトアップとはメルトダウンの反対現象を指す)。

アニマルスピリッツ(獣性)に駆られた投資家がモメンタム(勢い)で仮想通貨を買い上げる事例がその典型と言える。そのメルトアップが株買いにも波及している。この部分は短期投機ゆえ来年初めにも売り戻される可能性が強い。

但し、関税引き上げの影響が国内物価上昇再燃となるか、国内製造業底上げのプラス要因となるか、現時点では見方が分かれる。

とは言え、米国マネーはステイホーム、すなわち自国株買いがメインとなろう。海外に行く、すなわち外国株買いは極めて限定的だ。筆者が試しに「日本株は?」と探りをいれても反応は薄かった。政権不安定の日本や戒厳令の韓国に、敢えてこの時期に新規投資するのは「逆張り派」に限定されよう。

対して、ウォール街でのベッセント次期財務長官の人気は強い。ヘッジファンド出身という履歴が「彼は我々の仲間の一人だ」との一体感を生んでいる。

それでも株価上昇への反動警戒が根強いのは、FRB利下げペースの鈍化がほぼ確実になってきたからだ。サービス業中心の頑固なインフレが「インフレ退治の最後の1マイル」に手こずり下がり切らない。

この点に関して先週はFRB高官発言が相次いだ。
クリーブランド連銀ハマック総裁は労働市場に関して自身が想定していたより強く「9月時点の自身の予想に比べて、利下げペースを落とす必要がある」と言明。現在の金利は経済を刺激も抑制もしない中立水準に近い可能性があるとも述べた。

更に、ボウマンFRB理事も「基調的なインフレ率は依然として当局目標の2%を「不快なほど」上回っている」と強い表現で指摘した。
現時点では「労働市場よりもインフレの方がより大きな懸念だ」と語った。先週発表された雇用統計についても「失業率は上昇したものの歴史的に見れば低い水準」との認識を示している。

仮にパウエルFRB議長が「不快なほど」というような強い表現をFOMC後の記者会見で使えば、たちまちドル金利は再上昇して米国株は急落するであろう。

25年新年相場は荒れた展開を覚悟せねばなるまい。

なお、足元の金相場は急騰。中国含む中央銀行の買い(昨日書いたこと)が効いている。

2024年