2026年7月6日
首題の記事が日経電子版に載っていた。
金ETFから38トン資金流出、週間で4年ぶり大きさ FRBに一喜一憂:日本経済新聞
初の金ETFをNY証券取引所へ上場させることに直接関与した者として、金ETFの「投機化傾向」を強く感じる。
そもそも米国年金の長期保有を視野に開発された金融商品であったが、今や専ら個人・機関投資家の中の短期売買筋に使われている。
直近では、値を下げた金ETFを売り、AI関連株式・超大型IPOのための準備資金とする傾向が顕著であった。
今後、金価格が上昇復活となれば、いずれ金ETFに戻っている可能性が強い。そもそも金ETFで儲けた成功体験があるからだ。
この類の金ETF売買は所詮ゼロサムゲーム。FRBにではなく、金価格上昇・下落に一喜一憂する投機家には使い勝手の良いツールとなった。
とは言え、「一喜一憂」しない長期投資組のマネーもしっかり金ETFに入っている。売買回数が少ないので目立たないだけだ。メディアは派手に増えたり減ったりする部分だけに焦点を当てがちなので、投資家は冷静に実態を見るべき。
そもそも金ETFの金総需要に占める割合は16%程度。
宝飾品32.8%、地金・コイン27.5%、中央銀行17.3%に比し、各段に大きい項目とは言えない。
金ETFは証券取引所に上場しているので、株式の銘柄として売買が容易だが、投資用金地金購入はそもそも老後に備えるなど長期的視野に立つ投資行動だ。大幅に急騰すれば、金地金が店頭に持ち込まれ、リサイクルの売却も増えることもあるが、相対的には一喜一憂しない人たちが購入の主体だ。インフレの時代に実物資産をポートフォリオに加える時、現物でガッチリ保有したい気持ちは理解できる。現物の裏付けのある金ETFか、まともに金地金で持つか、選択は個人の価値観次第だ。
ただ、メディアでは、例えば「中国・インドで金地金購入が先週何トンあったか」までは把握できないので、記事にならないだけの話だ。
なお、金ETFについて筆者の注目は、年金基金や政府系ファンドなどのビッグマネーが購入を増やすか否か。ここは厳しい守秘義務により表に出ることはないが、長期目線で世界経済を見渡せば、潜在リスク(金融・財政・政治)が多く、彼らが金をポートフォリオに「組み込まない」リスクの方が重視される投資環境と言えよう。
既に中国では保険会社が最大4.2兆円の金投資を可能とし、試験的プログラムが始動している。対象は保険会社10社で、資産の最大1%を金に投資可能という。
個人投資家は資産の10~20%を金で運用と論じられるが、ビッグマネーは1%でも金市場を動かす規模となるのだ。
生保の金売買は、先述の如く厳正な守秘義務に包まれているので、報道されることは稀だ。
しかし、深く静かに進行していることであろう。