豊島逸夫の手帖

Page4301

金密輸激増

2026年5月25日

今日の日経新聞朝刊が「2025年度、日本からの金輸出額が4兆円を超えた。密輸された金地金の海外への流出の可能性が指摘される。」と書いた。
昨年も同様の記事が出て、筆者がコメントしたので覚えている。

これは日本独自の金買い取り時の消費税還付制度を悪用したものだ。店頭買取価格には必ず「10%消費税込」の数字が提示される。
そこで主として香港あたりから税関申告せずに日本へ持ち込まれた金地金を買い取り店で売却すれば、10%儲かるということになる。

このような消費税還付制度を採用している国は世界でも日本だけだ。従って「密輸業者」にとってジャパンは「おいしい国」となる。日本の輸出入統計には輸入に比し、異常に多い輸出額が計上される。日本税関も「これは密輸」と断定している。

しかし、この密輸業者或いは密輸システムは殆ど摘発できていない。おそらく個人があれこれ手を使って税関をすり抜けるか或いは大きな密輸組織グループが存在するのか。筆者は前者だと見ている。

昔から日本近海で船から船へ金地金を移し替える事例は指摘されてきた。筏の下に金地金が吊るされ流される事例もあった。韓国から日本へのフェリーで金地金を持ち込む手口もあった。いずれも大元は香港と言われた。あの手この手で密輸入する結果、年々金価格高騰もあり、金額が膨大に膨らんでいる。
結果的に日本は金の大輸出国となったわけだ。その間、正規の業者は顧客からの買い取りより顧客の購入の方が多い状況が続いている。

そもそも金地金は溶解してしまえば、正規か非正規か見分けることは不可能だ。非正規ルートの金が正規ルートに混じり込む可能性もゼロではない。これは誰も証明や断定はできない。

密輸に関しては、中国・インド・中近東地域では税金制度を利用するのではなく、長い国境線を越えて、金地金が非正規ルートで持ち込まれることが常態化している。筆者がワールドゴールドカウンシルにいた時も、金需給統計の中で密輸量の把握が難しかった。と言うか不可能であった。それでも総金供給量と総金需要量をex post(事後的)に同じ数字にせねばならない。結局、世界各地域から報告される需給の数字をボトムアップでまとめ、必ず生じる総需要と総供給の差は「投資需要と見做す」ことにしている。それゆえ筆者は発表される金需給統計の数字をトン単位で細かく見ることはない。まぁ正確なのは上場している金鉱山会社の生産量程度とか金ETFの売買量くらいか。中央銀行金保有量も中国やサウジアラビアでは「隠れ外準」(発表しない外貨準備)の存在が当たり前の国柄ゆえ、公表より多いことは間違いなかろう。

そもそも末端の宝飾需要など現地の無数の各店舗からの聞き取りアンケート調査に依存せざるを得ない。そこで中国やインドの小売業者が正確な数字を報告するか否かは疑わしい。適当な数字を書き込みがちだ。彼らとて「正確に金純分が何キロ分を売って、または買取ったか」など把握できるはずもない。
まして、その中でどの程度が密輸金であるかなど「知ったことではない」。最近インドが金に対する課税を強化したが、これとて密輸入を増やすだけのことになろう。

こう見てくると日本の事例は特異な現象と言える。とは言え日本の海岸線も長いからね。海上保安庁が頑張っても摘発には限界があるよ。

今後も金密輸の問題は新聞の特に社会面を賑わすことになろう。

2026年