2026年3月11日
文藝春秋PLUSからYouTube新作動画の後半が配信。
【金・銀・プラチナの相場展望2026】銀投資は「投資ではなく博打」|"安全資産"金はあくまで「脇役」|ウォーシュ次期議長候補と日銀"リフレ派"選出をどう見る?【豊島逸夫】
そして、国際金価格はジワリ5200ドル近傍まで回復(KITCOグラフ緑線参照)。
YouTubeでも指摘したことだが、今のNY市場の、特に短期売買投機筋のロジックはこうだ。
ホルムズ海峡の状況が悪化すると、原油100ドル突破→インフレ懸念→FRB利下げ観測後退、ドル高→金利を生まない金は売り。
対して、ホルムズ海峡好転となると、原油80ドル以下まで低下→FRB利下げ観測強まる、ドル安→金は買い。
念のため、ここでの「ドル高」「ドル安」というのは、当日の外為市場のドル売買の結果であり、長期的な基軸通貨ドルへの信認低下とは全く次元の異なる話だ。筆者流の言い回しで語れば、「虫の目」で現場を見ればドル高でも、「鳥の目」で俯瞰すればドル不安ということ。なんか懐かしい言い方だねぇ(笑)。
昨晩のNY市場では、ホルムズ海峡で僅か1隻のタンカーが米軍護衛付きで無事通過と米国防相が発表したことで「金上昇」。とは言え僅か1隻だよ。
一方で、イラン側が機雷を仕掛けたとの報道が流れた時はNY金が売られた。そのたびに短期売買筋は売ったり買ったり。
それにしても米国民の過半数が「支持せず」の世論調査を受け、中間選挙を控え、トランプ大統領の焦りが益々顕在化してきた。
ほぼ思い付きでSNSに投稿したことをあっさり覆す事例が続く。特に週末とか現地深夜に多いという報道もある。
要は、取り巻きに中東情勢専門家でトランプ大統領にとって耳の痛い話ができる人がいないのだろうね。
或いは、いたとしても軽くスルーして、自分に都合の良い情報だけに耳を傾ける。
それにしても中東情勢は実に複雑怪奇。
しかし、長期投資家は「有事の金」云々に一喜一憂することなく、金をしっかり退蔵している。ワイワイ騒ぐ投機筋の動きとの対比が鮮明だ。
結局、例によって確信の薄い投資家が金利益確定売りで金市場から退出することで、本当の金投資家だけが残り、市場の体質は強化されてゆく。
なお、筆者が気になっていることは、米商品先物市場で投機筋の思惑により決まるWTI原油先物価格が、世界標準原油価格の扱いで報道されること。
ヘッジファンドはレバレッジ付きで、特に原油そのものを所有したいのではなく、ひたすら原油を安く買って高く売り、その売買益を目的に投機的行動に走る輩だ。それゆえ「タンカー1隻が無事ホルムズ海峡を通過」の報道で、WTIが20ドルから30ドルも急落する。
このような不安定な状況は、よほど決定的な終戦(或いは破壊的結末)を迎えぬ限り日々続き、結局末端のガソリンスタンドまで価格的影響だけが瞬時に影響する。投機筋に国民の日常生活が振り回される結果になる。
そもそも金価格が上がっても一部産業用需要はあるものの、総じて国民生活に影響はない。対して原油は肥料に至るまで我々の生活に直結する。
それゆえ、米国金融規制改革法(ドッドフランク法)では、金融機関の自己勘定での金売買を厳しく抑制したが、金は「ほぼお咎めなし」となった。立法趣旨は「預金者のカネを使って原油売買で利益を追求するような銀行があってはならない」ということだ。
因みに、金もとばっちりで「コモディティー枠」に入れられ、米金融機関の自己勘定は極力控えられている。それゆえ筆者のようなベテランに白羽の矢が立ち、NYの銀行の社外アドバイザリーの仕事を引き受ける結果になり、国内の仕事に割く時間が減っている。まぁ言い訳だが(笑)。
余談だがゴールドマンサックスのブランクファイン前CEOは大卒後、日本流に言えば大手貴金属商の営業部長の職に就いたという人物だ。社名はJアロン。GSとしてはゴールド部門に実践経験豊かな人材を入れる目的であった。そしてGSの1社員(GSではパートナーと呼ばれる)になったところ、経営の才能が豊かだったのだろうね、たちまち社内で出世して、遂にはトップの座まで上り詰めたのだ。
まぁ、日本流に言えば、〇〇貴金属店部長が最大手証券会社のトップになるという、アメリカンドリームみたいな話。このようなダイナミズムに満ちた人事があればこそ、米国企業の稼ぐ力が強まり、米国経済が発展したのだろうね。長く終身雇用を続けた日本企業の稼ぐ力は伸びず、結果的に慢性的な円安ドル高に陥ってしまった。
筆者が意外に感じるのは、これだけ国際化している時代なのに、中国の華僑、インドの印僑に並ぶ和僑の数が未だに少ないこと。国際的舞台で堂々とディベートできる人材が未だに少ない。
まぁ、年長者として言いたいことは山ほどあるが、きりがないから今日はここで止めておくよ(笑)。