2026年2月17日
金高騰の要因として「基軸通貨としてのドルへの信認低下」が必ず挙げられる。ドル不安、ドル離れ等々、表現はさまざまだが、真の問題は「では、どうすれば良いのか」。
世界中の人たちがドルに不安を感じているのに、貿易決済はドルの決済システムが確立されていて、好き嫌いに関わらずドルを使わざるを得ない。
その背後にはトリフィンのジレンマという問題がある。
ドルが世界中に流通するには、米国の国際収支が赤字でなければならない。もし黒字となれば、ドルは米国に集中して、世界的にドル不足が生じてしまう。とは言え米国の国際収支赤字が定着してしまうと、ドルそのものの信認が低下する。
この問題は筆者が大学生の頃から国際経済学で論じられ、未だ結論らしき議論が出ていない。敢えて言えば、金本位制復帰があるが、これとてもはや過去の遺産だ。
そこで、ひとつの選択肢として浮上したのが「最適通貨圏構想」である。世界共通の基軸通貨などできるはずもない。であれば地域ごとに基軸通貨を決めたらどうか。そこで実現したのが「ユーロ」だ。それゆえ最適通貨圏構想論者であるコロンビア大学の故マンデル教授は「ユーロの産みの親」としてノーベル賞を受賞した。
南米大陸は米ドル、欧州はユーロとくるとアジア地域は人民元かドルか。ここは日本にとって重要問題になる。
一帯一路構想などで着々と国際通貨への道を歩む姿勢の人民元に対して、円は今や世界的に「安い通貨」になりつつある。その根底には国としての潜在成長力の厳然たる差がある。ここは高市政権の支持率が高いうちに日本経済の構造改革を断行せねばなるまい。「構造改革」は社会の中で必ず「敗者」を産むので、政治的に通りにくい話だからだ。
更に、人民元がおそらくデジタル人民元となろうが、アジア経済圏を席巻するような事態になれば、日本にとって政治的にも容認できる話ではあるまい。
とは言え、強い円志向はいばらの道である。この議論は長くなるので、今日は指摘に留めておく。
なお、金市場にとって興味深いのは、中東イスラム圏の基軸通貨として「金」の可能性があることだ。実際にマレーシアのマハティール首相はゴールドディナールという通貨を提唱。イランとの貿易決済に「試し使い」した事例もある。確かに中東イスラム圏は無国籍通貨としてのゴールドであれば抵抗感はあるまい。とは言え実行可能性は現状では薄いと言わざるを得ないが。
いずれにせよ、世界の中央銀行が外貨準備としてドルを減らし、金を増やす傾向は、世界の通貨制度のパラダイムシフトを示唆している。
昨日の日経新聞朝刊「複眼」に「金高騰の影」みたいな特集が組まれていたが、以上の問題に全く触れていなかったのは、結局「俄か金専門家」たちの限界ということか。