2026年3月4日

3月2日付け本欄「イラン情勢で金価格はどうなる」にこう書いた。
以下引用
さすがに5000ドル台ともなれば実需は減少。新規の買いも、これまでのような熱気は感じられない。そこに降って湧いたようなイラン動乱。本稿執筆時点(月曜昼)には5300ドル台で推移している。5500ドルが視野に入る。
但し、NY金市場には逆風も吹き始めている。
ホルムズ海峡発原油高以外にも、米インフレ再燃の可能性を重視して、FRB高官たちが利下げに消極的になり始めたことだ。
雇用の問題もAIが人間にとって代わり、失業や解雇増が懸念されるのだが、これは構造的問題でFRBが利下げすれば好転する話ではない。
今週は雇用統計など労働関連指標発表が相次ぐので、中東ばかりに目を奪われていると思わぬところで足をすくわれるリスクがある。
とにかく5300ドルというのは歴史的に信じられないほどの高値圏。
個人投資家は眼が慣れてしまって、もっと上がらないのが不満と言わんばかりの姿が目立つ。
とにかく5000ドルを超えると維持するだけでも大変なことよ。NY市場では、隙あらば売り倒したいという投機的ヘッジファンドが、うようよ徘徊しているからね。謙虚になりましょう(笑)。
引用終わり
その「うようよ徘徊している投機的ヘッジファンド」が昨日は売りに動いたのだ。理由はイラン戦争長期化のリスクがあり、市場も長期化に備えねばならない。短期で売買益を出さねばならない投機筋にしてみれば、ここで一旦利益確定売りにより、売買益を含み益ではなく計上できる具体的数字として残しておきたい。その上で改めて押し目買いで、新たなポジションをつくる意図が透ける。要は投機筋の都合で売られたわけだ。
ここで最も重要なことは長期的視点だ。
今回の金高騰を支える中銀の金買いとか、基軸通貨としての米ドルへの信認の低下などの所謂ファンダメンタルズ(基礎的条件)にはいささかも変わりはないこと。個人投資家がNY市場の投機筋に振り回されては、それこそ彼らの思うつぼだ。スイス銀行で堅気の衆を煽り、投機的売買してきた筆者が言うのだから間違いはないよ(笑)。
なお、NY筋と話すと、投機筋が慌てて売った理由があとふたつあるという。
まず、銀がとんでもない乱高下を演じ、大儲け組と大損組が出たこと。ここで大損組は含み益が残る金を売って、決算上つじつまを合わせる必要が生じた。
次に、株の信用買いをしていた連中が、株暴落で追加証拠金を現金で払わねばならず、やむなく金の「換金売り」でキャッシュを捻出した。金がATMと言われる所以だ。
更に、ヘッジファンドの「噂で買ってニュースで売る」という常套手段も見られたという。これ、まさに筆者がスイス銀行チューリッヒのトレーディングルームでスイス人先輩たちから真っ先に叩き込まれたことだったので、「まだやってるんだな」と思った。
長々書いたが、この売りの波が一巡すれば5000ドル台を値固めしつつ、5500ドル台を目指す展開となろう。中東地政学的リスクは続く。
その過程ではFRB次期議長ウォーシュ氏のタカ派発言(利下げ慎重派)が飛び出すか否かも要注意事項だ。そもそも今年2回の利下げを織り込んでいた市場だが今やゼロ回、更にインフレ再燃で利上げの可能性までFRB議事録で確認されている。
勿論、最も重要なことはイラン情勢がどこまで悪化するのか。こればかりは見守るしかあるまい。
さて、昨日朝日新聞夕刊紙面「いま聞く」に登場したよ。
金高騰の裏に「三つの理由」 イラン緊迫「有事買い」で最高値更新:朝日新聞
電子版にも出ているので、今日の午後5時までならロック解除され、読めるよ。
紙面で使われた顔写真が気に入らないけど(笑)。