豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 日経平均暴騰に思うこと
Page4291

日経平均暴騰に思うこと

2026年5月8日

日本株価が大変なことになっている。ここまでの急激な上昇を予測した株式専門家は筆者の知る限りいない。
その実態は昨日本欄でも触れたように、AIそして半導体関連株。
一方、39銘柄は「値下がり」した。

AIはインターネットと同じく、間違いなく世界を変えるであろう。歴史的変化を前提に、AI関連銘柄に買いが集中する傾向は、既に米国でも「異次元の株価上昇」という形で顕在化している。

とは言え、ここまでの株価暴騰となるとバブルの匂いが濃厚。日経平均も明らかに「買われ過ぎ」のサインを出している。早晩、調整局面に入るであろう。

しかし、AIのテーマはまさに「異次元の歴史的変化」であり、長期的株価上昇傾向は続くと思う。
但し、AI、即ち人工頭脳は怖い側面もある。
分かり易く言えば、AIに善悪の判断、倫理、総じて「魂」が現状では欠けていることだ。

昨晩、米国の経済TVを見ていたら、ポール・チューダー・ジョーンズというカリスマ投資家が警告を発していた。
曰く、昨年、今年と主たるAIの開発者や関連企業経営者たちが集まる会議に出席。そこで「10年後にはAIが人類の半分を滅ぼす」という恐怖映画みたいなことを果たして信じるか、出席者全員に問うたという。昨年はYESが10%。それが今年は60%に急増したという。AIの開発者が制作中の人工頭脳が独り歩きし始めると、手が付けられない事態を憂慮しているのだ。

AIに倫理観やsoul(心)を教え込むのは難事だ。現状では人間が命令すれば、イランの最高指導者が何月何日何時どこにいるか特定して暗殺をやってのける。AIに例えば「核戦争は悪いことだ」という認識は現状では無い。ゴルゴ13も失業することであろう(笑)。まぁそんな冗談も言っている場合ではない。
現状では人間の作ったAIが自らを滅ぼす結果をもたらす可能性があるということだ。
もちろん今後AIに魂を入れる過程に入る、或いは既に入っている。
その過程は紆余曲折もあろう。
魂を植え込んだはいいが、AIたちがキリスト教に変わるAI教みたいな巨大な新興宗教を作るという誤作動だって無いとは断言できまい。
人間の手を離れて、AIが独立する日を「怖い」と感じつつ、AIの開発者は作業に追われ、その企業集団の株が集中的に買われ、資金的な余裕もできる。

因みに、現行の米国中心のAI関連企業の設備投資が円換算で年80兆円!に達すると言われるが、その全額を企業のキャッシュフローで賄えるという試算もある。AIブーム、恐るべし。

なお、金トレーディングの世界にも、NYを中心に確実にAIが進出している。AIが作ったトレーディングプログラムで金売買が行われている事例が急速に増えているのだ。株売買の世界も同様。その結果、同じようなプログラムが使われると、買いが買いを呼び、売りが売りを呼ぶ結果になりがちだ。

更に、NY市場のゴールドトレーダーにも、人事異動で株や債券から移ってきた人たちが増えている。特に金に関する知見が薄くても、AIを操ればお役は務まるわけだ。筆者の友人のトレーダーが「今や、人間様はAIの売買の解説役、そしてシステムメンテナンス係みたいなものさ」と嘆いていたことを思い出す。トレーディングルームも金価格大変動中なのに罵声も聞かれず、シーンとしている。但し、相場モニターを見つめる人間様の目は血走っている。

話は日経平均に戻るが、昨日の尋常ではない株価暴騰の影に、AIの自律的作動も一役買っていることは間違いあるまい。
テレビ報道で「本日は日経平均最高値。証券会社の顧客担当は電話での問い合わせで大忙し」と証券会社の現場の様子が映されるが、あれはもはや過去の光景。そんな悠長なやりとりを交わしている間に時代は急速に転換点を迎えつつある。
筆者の注目はその過程で「ゴールド」という貴金属がどのように変遷するか、しないのか。いずれ、じっくり書いてみるつもりだ。

2026年