2026年6月22日
足元の金価格は4100ドル台で推移しているがウォーシュサプライズがジワリと効いている。米イラン交渉がスイスで行われているが合意といっても薄氷で市場は懐疑的だ。米・イラン・イスラエルという三つの変数が同時に解ける連立方程式は見つからない。
対して、ウォーシュ新議長率いる新FRBは明確に年内利上げを示唆している。それも「利上げするか、しないか」ではなく、「利上げが何回あるか」というレベルの議論になってきた。
市場が見る利上げ利下げ確率を示すFED WATCHによれば、12月FOMCまでに利上げゼロ(政策金利据え置き)の確率は10%、利上げ0.25%1回が33%、2回が36%、3回が16%となっている。回数もかなり割れている。
これはウォーシュ氏が「インフレ対策(=利上げ)」を重視すると語ったと同時に、今後FRBが発信する情報を減らす(手の内は明かさない)方針を断言したからだ。FRB内の外部に対する言論統制のようなもので、市場は「レーダーなき夜間飛行」を強いられる。投機筋にとっては流言飛語を囃し、相場を荒らす格好の機会が増えることになる。
更にQT(量的引き締め)についてウォーシュ氏は積極的なのだが、正当化するためにこの問題に関する分科会を設置することになった。QE(量的緩和)でバラ撒かれた過剰流動性を回収する金融政策ゆえ、過剰流動性相場の色合いが強い昨今の金市場には打撃となる。
かくして、ウォーシュ氏の登場はFRBにとって歴史的変革となる可能性が出てきた。全貌はまだ明らかになっていない段階だが、年内の金市場は利上げの影に怯えることとなり、中央銀行の買いが増えても本格的に持ち直すことは難しそうだ。中銀買いは価格上昇要因というより、少なくとも年内は価格下支え要因と見るべきであろう。
やや専門的になるが、米金融政策の引き締めバイアスは米国債利回りイールドカーブの平坦化を招いている。2年債利回りが4.05%から4.17%近傍に急上昇したのに、10年債利回りは4.51%と多少上昇した程度だ。その結果10年債と2年債の利回りスプレッドは下落している。これがイールドカーブ平坦化とされる現象だ。金融政策転換時に見られる典型的な現象である。その影響は市場に1年365日絶え間なくジワリと効く。
対して、米イラン交渉という市場の材料の影響は猫の目のように変わり、ある時は上昇要因に、次の瞬間には下落要因に変わることが常態化している。中東全面平和は夢のまた夢。金市場のボラティリティーを激化させる要因である。
では、金価格が本格上昇に向かう時期はいつか。
今後のウォーシュ氏の決断にかかっているが、利上げにより米インフレ率が目標の2%を達成すれば利上げは終わり、その時点の失業率などの状況により据え置きか、利下げかに転換することになる。金の上昇モメンタムも復活する。来年前半くらいが目途であろうか。こればかりは毎月発表される雇用統計やCPIなどの重要経済指標次第である(以上は説明のため、かなり単純化した議論である)。
ひとたび上昇モメンタムが戻れば、中銀買い、基軸通貨ドルの信認低下、米財政赤字膨張不安、中東以外の地政学的リスクなどに支えられ市場の基調が変わる。そうなると上げのスピードが速いことは既に今年前半に我々が体験したことだ。その過程で5000ドルも通過点になろう。
筆者は週末もNY市場の仲間たちとZoom会議を繰り返し、今週も連日彼らと議論してゆく。
なお、ウォーシュ新金融政策はあくまで結果論だが円安志向だ。160円が下値になるようなレンジとなろう。為替介入が市場の主流に逆らっても無理筋であることは、既に2回実証済みである。円建て金価格には上昇要因となる。