豊島逸夫の手帖

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協調介入、トランプ氏から高市政権への陣中見舞い

2026年8月4日

「タカイチ首相が円安で困っているようだから、ちょっと助け舟を出したのさ。ジャパンは良い友だちだからね。真珠湾の時を除いては。」

今回の日米協調介入について聞かれたトランプ大統領の発言だ。
従来トランプ氏は自国通貨(ドル)を安くして、米国製品の国際競争力を強める政策を語ってきた。それゆえ日本の円売り・ドル買い介入には「反対」のはずだ。
然るに今回は反対どころか、積極的に支持する姿勢に変身。なぜか。

円安が行き過ぎ、日本経済が悪化して、既に日米合意済みの日本からの巨額融資案件が履行できない非常事態になることを恐れたからだ。取りっぱぐれのリスクとでも言えようか。

更に、ベッセント財務長官は高市首相が積極財政を標榜して、消費税減税もほぼ確定の状況であることも知らせたに違いない。日本国内では財源が曖昧なので、更なる財政悪化が懸念され、日本国債が売られ、円長期金利が急騰という危険信号が点灯していることもトランプ氏に耳打ちしたと思われる。

これは米国側にとって他人事ではない。日本国債が売られると、同様の財政不安を抱える米国国債まで売られてしまうからだ。日本は世界最大の米国債保有国なので債券市場では存在感が強いのだ。特に米国長期国債が売られると、長期ドル金利が急騰するリスクがあり、既に上昇中だ。これを放置すると、連動する住宅ローン金利が上がってしまう。「これはまずい、特に中間選挙前には。」という訳で、今回ばかりは日本の円安是正が米国の国益になったのだ。

かくしてベッセント財務長官主導の下に、異例の日米協調介入が実現した。「異例」なのは「日本はドル売り、円買い介入」、「米国はユーロ売り、円買い介入」。米国側がドル売りすれば米国債を売らねばならないので、これは避けたのだ。

それにしてもベッセント氏と言えば、元々ジョージ・ソロス氏が率いるヘッジファンドのCIOとして巨額の投機的円売り攻勢を主導した人物だ。それが今や「財務長官」に大出世して、円売り投機家退治作戦を実行する立場になった。

本欄でも2013年2月14日付け「ソロス氏、円売りで930億円稼ぐ」と題して書かれている。

この時米国メディアは、ソロス氏の信任厚いベッセントなる有能な人物がいることを実名入りで報じていた。
今やヘッジファンド業界では「あいつは財務長官となり、我々仲間を売った卑怯な奴」と罵られていることであろうね。

なお、今回の円救出劇にベッセント財務長官は、日本の介入円売りの際に米国債を使わない「奇策」を講じた。日本側が保有米国債を担保にドル資金を調達できる救済手段を使ったのだ。本来これは金融政策担当のFRB管理下に入るのだが、今回は財務省が(恐らくウォーシュFRB議長に相談なく)勝手に使ったと見られている。その意味ではベッセント氏とウォーシュ氏の人間関係に遺恨を招いた。

今後の問題は、この特例救済措置をどこまで日本が使えるのか。無尽蔵というわけにはゆかないから、当然、介入用ドル資金手当てには一定の限界がある。今後市場が注視することになろう。

話が長くなったが、今回の日米協調介入については、円売り投機筋にお灸を据えたことで一定の効果はあった。

しかし、肝心の円安の原因、即ちファンダメンタルズまで協調介入で変えることはできない。
即ち、日本が原油など資源を輸入に依存すること。
更に、高市積極財政の財源が曖昧であること。

今年の円安の構造要因は「筋が悪い」と筆者は語ってきたが、NY市場では結局、介入は時間稼ぎに過ぎないと報道されている。

日銀利上げがひとつの円安打開策として語られるが、利上げすれば景気に悪影響を与えるリスクが無視できず、植田日銀総裁も決めかねているのだ。そもそも、0.25%程度利上げしたところで焼石に水と本欄では既に指摘してきたところだ。

外為市場では、当面、追加介入を警戒しており、円高説も流れるが、中期的に円安を止めることは叶うまい。

2026年