2026年6月19日

昨日は早朝の重要イベントFOMC後、NYの仲間たちとのZoom会議などで諸々長引き、ブログ更新の余裕がなかったが(殆ど寝てないよ~)、その間NY金市場ではウォーシュ新FRB議長が同氏流に短縮された記者会見において、強い表現で(雇用安定より)物価安定こそがFRBの最重要使命と断言したことで、俄かに市場の関心が「年内利上げはあるか」ではなく、「年内利上げは何回か」にまで進んでしまった。金利が付かない金には強い逆風。金価格も4200ドル近くまで急落した(KITCO72時間グラフ赤線参照)。しかし、昨日のアジア時間に米イラン署名合意の報道が流れ、再び4300ドル台回復(同グラフ赤線参照)。FRB発の売り要因と中東発の買い要因が拮抗した結果、膠着していた4300ドル攻防の域を出なかったのだ。
しかし、昨日の欧米時間になって国際金価格は再び下落基調となり、本稿執筆時点の日本時間金曜午前には4200ドル台を割り込んでいる(同グラフ緑線参照)。
やはりウォーシュFRB新議長の影響の方が強いとの成り行きだ。
それを端的に示すのがFED WATCHと呼ばれる「市場が見る米政策金利の確率」。現時点では年内「利下げ確率」が消え、「利上げ確率」、それも利上げがあるかないかではなく、「利上げが何回あるか」にシフトしていることだ。
具体的には執筆時点で年内利上げ1回の確率が36%、2回が34%、3回が13%。
FOMC前はゼロ回説か1回説が圧倒的であったので、これは「急変」と言える。
NYとのZoom議論での話題は「ホルムズ海峡開放で原油下落すればインフレ率も下落するのでは」というポイントだ。
ここからは少々専門的な物言いになる。
これまで懸念されていた米インフレは原油価格上昇が引き起こした「コストプッシュ」型インフレ。然るにFRBが懸念するインフレの実態はもっと根が深い。ガソリンスタンドの価格が上がっても米国GDPの7割を占める個人消費は底堅い。例えば17日発表の米小売売上高は4か月連続の増加を見せた。このような経済指標を見せつけられると、物価安定最優先のウォーシュFRBは「demand pull(ディマンドプル)」型のインフレを抑制せねばならない。AI関連、スペースX上場などに陶酔する株式市場で大儲けした個人投資家たちが「資産効果」によりおカネを使いまくることなどが一例だが、それにより需要過熱が生じるシナリオだ。
結果的に米インフレはウォーシュ氏の発言を引用すれば「過去5年間、FRBは2%のインフレ目標を達成できなかった」(これは前任者パウエル氏への強烈な批判)ことになりそうだ。
イランとの覚書が署名されても(筆者には、これとて中間選挙を意識した60日間の時間稼ぎにしか見えないが)、パウエル前議長が残した負の遺産を、新議長は「断固叩き潰す」というニュアンスの表現で語り胸を張った。筆者は彼の記者会見を深夜米国経済テレビの生中継で一部始終見ていたが、実に迫力のある場面であったよ。
Sticky(粘着質が強い=しつこい)インフレに対峙するには利上げが「必須」となる。
更に、金市場とこれは株式市場も懸念していることだが、ウォーシュ氏はQT(量的引き締め)に前向きなことも重要だ。
QE(量的緩和)でバラ撒いたマネーの回収である。ウォーシュ氏は米国債を買いまくったFRBの「肥大化」を批判してきた。そこでスリムになるためには買い取った米国債を民間市場に戻し、その対価として民間の「過剰流動性」を吸い上げることになろう。株も金も投機マネーの参入により「流動性相場」の色合いが強いので、QTは相場の「短期的」売り要因として無視できない。
但し、言っておくが、あくまでカネ余りの落とし子である投機マネーが退出するだけで、金市場の中長期マネーは暴れ者(=短期運用型ヘッジファンド)が減れば市場の体質が筋肉質になるので歓迎するところだ。その過程で金価格が下落しても中長期目線では動じない。
外為市場ではウォーシュ氏デビュー後、利上げ観測=ドル金利高によるドル高(円安)が161円を突破して進行中だ。いずれ為替介入第二弾となり、それも再び失敗して165円程度まで円安が中期的に進行することになろう。今やウォーシュ氏は日本の介入当局(財務省・日銀)にとって意図せざる敵役になってしまったね。
そこで有事のドル買い、金売りなどが語られるが、これはまず投資家が米ドルを不安なく安心して買っているからではない。金利差などを理由に一儲けしたい人たちがドルを買っているのだ。同様に金は金利が付かないことによる「金利差」を理由に一儲けしたい人たちが「有事の金売り」を囃し、売ったまでのこと。ドルへの不信感(歴史的ドル離れ傾向)は消えるどころか、トランプ氏自作自演のイラン戦争により益々強まっている。長期的な視点では、金を買うという投資行動は基軸通貨の座に甘える米ドルへの不信任投票なのだ。特に日本人にとっては自国通貨安ヘッジとしての金保有という意味合いが益々強まっている。