豊島逸夫の手帖

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日銀、歴史的政策変更、緩和は維持

2024年3月19日

日銀が遂にマイナス金利解除を決めた。これは「利上げ」であるが緩和は維持する。すなわち日本国債の買い入れは続け、金利が上がり過ぎないようにする。それゆえ普通なら利上げで円高となるところ、緩和は維持するということで、異例の利上げでも円安となった。更に日経平均が急落した時に、日銀が株ETFを購入して買い支えるという救済手段も止めることになった。

この政策変更の時期が早まったのは春闘で大幅賃上げが相次ぎ、物価上昇以上の実質賃上げが実現する見込みが立ったから。「もう株式市場も独り歩きしろ」というメッセージが込められている。

というわけで、長くデフレ漬け状態にあった日本経済にもかすかながら希望の灯が見えてきた。

とは言え、まだ楽観的になれる状態とは言い難いというのが、一般の国民の生活感覚であろう。

ヘッジとしての金の役割は未だ必要とされよう。

金は持っていて役立たないのが実は最も望ましいのだが、なかなかそういうユートピアが実現するのは難しいものだ。

資産運用の観点では、日銀のETF購入で日経平均は4000円ほどかさ上げされている。39000円なら実力は35000円程度ということだ。

今回の一連の流れを見て、NYの友人たちは「いかにも日本らしい」と言う。まず国が新NISAという制度を導入して、国民が横並びで一斉に「投資」に走る。次に政府の要請で日本企業がこれまた横並びで一斉に賃上げに走る。「皆で渡れば怖くない」という心理が日本らしいというのだ。万が一失敗すれば皆一緒に桜と散るわけだ。

こう書いているうちにドル円相場は150円を再び突破した。
日経平均は再び4万円を超えた。

そして日本時間明朝、祝日だが米国FOMCが終わり、パウエル記者会見が開催される。更に3か月に一度発表されるFRB経済見通しの中の所謂ドットチャートに注目。FOMC参加者たちの24年の利下げ回数及び利下げ開始時期の予測の分布図である。前回は年3回で3~4月くらいが中心値であったが、その後米国経済過熱の可能性を示唆する経済指標が相次ぎ、今回は利下げ2回で6月以降という見方が主流になりつつある。「利下げは急がず」。これはNY金にとって逆風となるはずだが、謎の金高は続きそうだ。

2024年