豊島逸夫の手帖

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イラン・イスラエル報復に水入り見通し

2024年4月24日

世界情勢予測の第一人者であるイアン・ブレマー氏(ユーラシアグループ)は、イランとイスラエルの報復合戦については終戦と見ているとの見解を示した。もちろん中東の火薬庫がいつ爆発するかもしれないことは大前提だ。それゆえ本稿見出しには「水入り」と書いた。

この流れに金市場は激しく売りで反応。イスラエル報復直後の2410ドルから一時はNY金が2300ドルを割り込むかとの水準に約100ドル幅で暴落した。その後NY時間に入り4月の米購買担当者景気指数(PM)が前月比で低下したことを受け、利下げ議論が若干蒸し返され2330ドルまで戻している。

荒っぽい調整局面だが、筆者は長期金価格上昇トレンドが継続されるためには避けて通れない関門と認識して歓迎している。

なお、ここ数日NY金は市況の法則に従った価格反応を見せているので、「謎の金高」と騒がれたことを思えば価格形成も正常化しつつある。

次の市場のテーマは4月30日~5月1日に開催されるFOMC。その前に今週金曜日に発表されるPCEインフレ率。パウエルFRB議長が最も注目している物価指数ゆえ注目度は高い。

1、2、3月と3か月連続で上振れした米各種インフレ指標はFRBの利下げ政策に大きな影響を与えた。インフレが想定以上に頑固で利下げなど年内はできないかもしれないとFRB高官が公言するまでになった。年初は24年に7回の利下げを織り込み、上昇してきた金価格にはちゃぶ台返しの成り行きだ。昨日は遂に24年利下げ見送りどころか、今後12か月に「利上げ」の可能性が20%に達した。絵空事で済まされない展開だ。

とは言え、昨日本欄に添付したブルームバーグ電で詳説された中国の金爆買い効果や世界の中銀金大量購入という強い追い風も吹いている。

今後は2000ドルが2450ドルまで暴騰するような事態にはならないだろうが、じっくり2300ドル台を時間をかけて値固めして、更なる上昇の土台を堅固にすることが重要になってくる。

一方で為替は155円台の攻防或いは睨みあいが続いている。円建て金価格には引き続き上昇圧力がかかりやすい。介入で大幅に円高に振れても介入が一巡すれば再び円売り第二波が始まるであろう。

ところで昨日は懐かしい友人とLINE電話した。このブログを読んでいる金業界のベテランなら覚えているかな。金の独立系調査機関GFMS(Gold Fields Mineral Services)を創立したポール・ウォーカー氏(Paul Walker)。今は南アのケープタウンに住まう。

友人夫妻が訪問してLINEで繋いでくれた。日本贔屓でね。毎年日本の需給調査のために来日していた。写真はTable Mountain。喜望峰の象徴みたいな雲の上のスポットだ。

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2024年