豊島逸夫の手帖

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雇用統計後、NY金6月限2350ドルまで急騰

2024年4月8日

連日の国内外金価格の史上最高値更新は金価格を長く見てきた筆者でも経験したことがない現象だ。これまでの事例では史上最高値更新と言っても瞬間タッチで急落に転じたものだ。それが今回はNY金で2000ドル以上、国内金価格で1万円以上という歴史的高値圏が一過性ではなく継続している。

しかも、これが専門家泣かせの実態なのだが、最近の短期金価格変動が、これまでの「市場の常識」では説明できない。そもそも金は「ドルの代替通貨」として位置付けられ、金利を生まないことがデメリットとされた。それが今回はドル高でも金利高でもお構いなしに買われている。リスクオンでも買われる。フィナンシャルタイムズもウォールストリートジャーナルも「謎の金高」と報じているほどだ。

何故か。
モメンタムプレーヤーという市場の勢いに乗って買い進む投機家集団が、短期で買っては売りを繰り返し、ほぼ8連勝と勢いに乗っているからだ。彼らに理屈は不要だ。メディアの取材もすべて拒否する。自らの手口をベラベラ喋って得することは何もない。近年はアルゴリズムやAIを駆使して高速度取引で金を売買する。

最近の事例としては、3月雇用統計が発表された日(4月5日)の値動きがその典型だ。新規雇用者数が30万を超す好調な結果であったので、利下げ観測後退が鮮明になった。金利を生まない金にとって利下げが見送られることは、高金利が続くことを意味するから、金価格は下がるはずだ。しかしNY金は40ドル超の急騰を演じ、2340ドル台で引け、史上最高値を再び更新する結果となった。

このような状況下で、筆者は短期価格変動の理由は「投機」と断じて、中期的要因が金上昇トレンドを醸成していると語っている。
その要因とは、
1.公的部門である世界の中央銀行が年間生産量の1/3にあたる1000トン以上を外貨準備として買い占めていること。
2.文化的金選好度が強い中国とインドが高値にも関わらず現物金購入を続けていること。この2か国の民間部門で、これまた1000トンを優に超す需要が今年も見込まれる。
3.中東の地政学的リスクがエスカレートしていること。
この3大要因が中期的に金価格を支えているのだ。

その上で投機筋が暴れている構図である。それゆえいずれ投機筋が短期買いポジションを巻き戻す時には表層雪崩的な価格急落が起きるであろう。しかし上記の3つの要因が根雪の如く効いて金価格の下値を切り上げているのだ。

なお、円建て金価格は為替介入があれば急落する局面もあろう。そこは買い時と筆者は見ている。

NY金の予測レンジは2000~2500ドル。

NY金はアジア時間帯で2372ドルまで急騰した。
ロイター電も、特に理由がないので、困っている様子で、投機的買いと中東リスクによる買いと伝えている。イランのイスラエルへの報復攻撃でも起きれば2400ドルだろうね。

2024年