豊島逸夫の手帖

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日経平均も金も買いまくるモメンタムプレーヤーとは

2024年3月12日

今、NY市場で話題になっているのが「モメンタムプレーヤー」集団の動きだ。

彼らは文字どおり「モメンタム(市場の勢い)」を追って、市場から市場へ回遊する投機集団だ。彼らに理屈は不要だ。相場解説者を困らせる存在でもある。

株に関しては、常に強気でメディアでも積極的に発言するウォートン・ビジネス・スクールのジェレミー・シーゲル教授も、8日に「彼らとやり合うのは、鉄の神経が必要だ」と語った。今の米国株は彼らの草刈り場と化しており、まともに解説することは難しいと珍しくお手上げの様子だった。ウォートン・ビジネス・スクールと言えば、筆者がMPT(近代ポートフォリオ理論)を学んだところでもあり、そこの看板教授の発言は身に染みる。

このモメンタムプレーヤーたちが日経平均買い攻撃が一巡したところで金市場にも標的を向けた。

いきなり経済指標など特に買いの材料もない時に大型買い注文を浴びせNY金先物を急騰させた。金市場では「謎の金高」と話題になった。更に8日金曜日の雇用統計発表後に新たな集中的金買いで史上最高値圏である2200ドルを突破した。

彼らは今週の日経平均の動きを見ても分かるように逃げ足も速い。目標達成後、FOMO(Fear of missing out出遅れ焦り)組が出遅れたと焦って買う過程で売り手に回り、市場の流れに逆らわず、売り抜ける。更に「噂で買ってニュースで売る」という常套手段もある。

モメンタムプレーヤーの投機的売買を支えているのが、AIによる売買プログラムと高速度取引だ。彼らのトレーディングルームに人数は少なく、相場が荒れても静かだ。トレーダーと称するスタッフの多くはコンピューターエンジニアである。活動拠点もオフウォールストリート。ニュージャージーなど郊外の貸しビルに陣取るグループもある。

相場は「勝てば官軍」。専門家のコメントを冷ややかに見ている。彼ら自らメディアに出ることはない。手の内を晒すことになるからだ。

筆者の知り合いはハーバード卒だが、父が保有していたテキサスの大牧場を売り払い、その資金でモメンタムプレーヤーになった。

NY市場では「これまでの市場の常識が通用しない」と言われるが、確かに「過去の事例」だけを追っていると「木を見て森を見ず」になりかねない。

今回の金急騰劇も直近で2100ドル超えてからは実需の裏付けがなく、こうした連中に持ち上げられている面を見るに一抹の危うさも感じる。

一方、彼らが集中的金買い攻撃を続ければ、2300ドルくらいは一か月で到達してしまう可能性もある。日経平均も4万5千円程度は彼らにとって十分に射的距離内なのだ。

2024年