2024年4月25日
NY金価格が2300ドル台で健全な調整局面に入ってくれたことで、あとは為替要因が重要になる。そこで今日は155円を突破した円安の今後について詳説する。
国際通貨投機筋は日銀金融政策決定会議の前日を狙い、防衛ラインとされた155円を突破した。彼らに勝算はあった。25日には米国GDPが発表され、米国経済好調というドル高要因が見込める。更に26日にはFRBが最も重視するPCE物価指数が発表される。ここでも米インフレ指標1~3月連続上振れの流れに歯止めがかからないことが予想される。前月比で「変わらず」でもインフレの粘着性と解釈されそうだ。更に4月30日から5月1日の日程でFOMCが開催される。今回はパウエル議長が既に手の内を晒している。4月16日に「最近の経済データにより、明らかに(インフレ目標達成の)自信が持てなくなり、その自信を得るまでに未だ時間がかかる」と、それまでの見解を覆したからだ。今や「年内利下げ見送り」が極論かと思えば、「今後12か月以内に利上げ再開」のシナリオも出てきて、その確率が20%に達している。
片や日銀の追加利上げは今回見送られる可能性が強く、今後実行されてもせいぜい0.25%程度と見られる。対してFRB側は5.25~5.5%の現行政策金利水準を「高く、長く」維持する姿勢が鮮明だ。更にデータ次第ではダメ押し「利上げ」の可能性さえ絵空事と片付けられない。
このような状況下で開催される日銀会合では、植田総裁が語れば語るほど金融政策選択肢の限界が露わになるだけとなろう。ワシントン訪問時にも英語で「利上げに踏み切る可能性は非常に高い」と明言したが、かえって利上げ幅の限界をNY市場に意識させる結果になった。
NY市場主導の155円突破ゆえ「アウェー」の為替介入でどこまで円高方向に動かせるか。もはや介入あっても150円程度とは国際通貨投機筋の読みだ。彼らは140円台半ばから155円まで円売りポジションを積み上げてきたので、150円なら一部利益確定の水準ゆえ「凌げる」と見ている。更に介入が一巡すればドル買い・円売り再開の目論見も透ける。
中期的な市場の潮流も昨年と異なる。23年の円安進行時にはFRBがいずれ利下げにピボット(転換)すれば円高・ドル安が見込まれた。ところが今年はその利下げ予測が急速に後退している。
総じて、日銀会合前までに日本金融当局は為替介入に動かなかったことで、結果的にルビコン河を渡ってしまったようだ。