豊島逸夫の手帖

2024年5月14日

ＮＹのヘッジファンドなど投機筋と突っ込んだ会話をしていると、消費者物価上昇率（コア）が下がらず、前月並み或いは上振れとの見方が目立つ。それゆえドル円のポジションも概ね１５８円程度を視野に置いている。

その理由は、キーワードで言えば「ラグ」。

そもそも消費者物価上昇率の１／３前後は住宅コストだ。しかし家賃は下方硬直性が強い。パウエル議長も前回の記者会見で語っていたことだが、家賃更新の場合、家主の立場ではいきなり大幅に上げ難い。しかも新築住宅購入より賃貸を選択する傾向が相変わらず続いている。結果的に消費者物価統計に家賃増が反映されるのには時間を要するわけだ。

更にサービス産業の代表格である医療セクターは、そもそも高いコスト水準からの緩やかな下落基調ゆえ、消費者物価上昇率に反映されるには「ラグ」がある。自動車保険も自動車価格高騰から「ラグ」を経て統計に表れるのだが、実態は未だ高水準にある。

かくして明日発表の米消費者物価指数は概ね前月並みとは言え、高水準と言える年率３．８％を見込む投機筋が目立つのだ。各種の事前予測では３．６％が多いが、遅行指標ゆえ素直に受け入れ難いようだ。

外為市場では既に１５６円台半ば近くまで円安が再進行しているので、１５８円は「保守的」とさえ見られている。
日本の通貨当局も１５日は再び２４時間臨戦態勢となろう。

なお、４月の投信リターンのランキングを見ていたら、１位がカナダやオーストラリアなどの金鉱企業の株式に投資するファンドで、月間リターンは１２．３％。５〜７位には金現物へ投資するファンドがランクインした。株の世界でも金投資の裾野が広がってゆくことを感じる。国内の金ブームはホンモノだね。