マイナス金利が導入され、いまだかつてない低金利の時代に突入しています。銀行にお金を預けていても資産はなかなか増えません。そうした中、新たな資産運用の手段として注目を集めているのが金などの実物資産です。 投資商品の中でも、普遍的な価値を持つのが金やプラチナ、銀などの貴金属です。今回は貴金属投資の特徴について見ていきましょう。
目次
金は世界共通の資産
金は古くから、その希少性を理由に世界中で資産として扱われ、紙幣の登場までは広く通貨として利用されてきました。また、金は権力の象徴、富の象徴として尊重されてきました。
それは21世紀となった現代でも同じこと。2008年に起きたリーマンショックでは、それまで高い価値を持っていた大企業の株式や債券、さらに不動産までもが一瞬にしてその価値を失ってしまいました。通貨も経済情勢や社会情勢により、その価値が大きく変動する可能性があります。
一方、「有事の金」という言葉があるように、金がその価値をもっとも発揮するのは、戦争や経済危機、自然災害などが起きた「万一」のときです。普遍的な価値を持つ金は、無価値になることがないのです。
これが、金投資の最大メリットといえます。
金の特徴については「金投資のメリット・デメリットとは?」をご覧ください。
希少性では金に勝るプラチナ、でも景気動向に敏感
世界で古くから通貨の役割を担ってきた金や銀とは異なり、通貨としては性格の弱いプラチナ。一方、金と比べても生産量は圧倒的に少なく希少価値の高い貴金属です。基本的に金より高い値で取引されてきましたが、最近では値を下げ、国内では金価格を下回って推移しています。
需要の約4割が自動車用
ジュエリー素材としてよく知られるプラチナですが、実際は宝飾品としての需要が約3割程度で、約6割は工業用としての需要です。最も多いのはディーゼル車の排ガス触媒(排気ガスに含まれる有害物質を無害化するための物質)としての需要です。
そのため、プラチナ相場は自動車の売れ行きや世界の経済情勢に強く影響されます。端的な例が2008年のリーマンショック時のプラチナ価格の急落です。また、2015年に発覚した独大手自動車メーカーの排出ガス不正問題でも、売り注文が増え価格が下落しました。 ディーゼル車が普及するヨーロッパや宝飾品需要の大部分を占める中国の動向も、プラチナの値動きを知る上で注目すべき要素です。
南アフリカに偏った供給
プラチナの約7割は南アフリカで採掘されています。 そのため、南アフリカの不安定な経済情勢や社会情勢がプラチナ価格の値動きに表れてきます。リーマンショック直前に見られたプラチナ価格の急騰は、現地鉱山会社の電力不足による生産停止によるものでした。また、ストライキも価格を押し上げる直接的な要因になっています。
安価な銀、金とプラチナ両方の性格を持つ
金に比べると非常に安価で、一部の海外投資家を中心に人気の高い銀。金には手が届かないが小口の投資ができるため、その値動きは金とよく似る傾向があります。ただし、市場規模が小さく安価なことから、金より大きく値動きする特徴があります。過去には投資家ウォーレン・バフェット氏の買い占めによって大幅に値を上げたこともありました。
工業分野での多様な需要
銀も需要の約6割が工業用です 。用途は半導体などの電子材料分野をはじめ多岐にわたり、デジタル化に伴い写真用の需要が激減した後も、太陽光発電など新しい需要が生まれています。これが金と大きく違う点で、経済危機状況下で金は安全資産として買われ値を上げますが、銀は工業需要の減速に伴い値を下げることから金とは対照的な値動きをする場合があります。
副産物としての銀
銀はメキシコやペルー、中国をはじめ世界の広い地域で生産されています。銀そのものを採掘するというよりも、鉛や亜鉛、銅といった鉱石の副産物として生産される割合が高く「ベースメタル」と呼ばれるそれらの需給関係も銀相場に影響します。
金との価格差
現在、銀の国内価格は金のおよそ66分の1です 。これは金と比べると鉱山生産量が非常に多く、それが大きな価格差を生む要因と言えます。 長い歴史の中で大きく変化してきたこの価格差も、ひとつの指標になるという見方があります。
特徴を理解し、リスク分散を意識した投資を
信用不安やインフレリスクに強く、株式と反対の値動きをする傾向がある金。一方、景気の影響を受けて株式と似た値動きをする傾向があるプラチナ。そして基本的には金と連動して動くが、プラチナのように景気に敏感な側面があり、有事には金と対照的に値を下げやすい銀。
このことから、安定性があり長期保有に適する金に比べ、プラチナや銀はハイリスク・ハイリターンで投機色の強い貴金属と言えます。
プラチナや銀は金と同様、積立やETF(上場投資信託)、現物購入といった方法で投資できます。異なる値動きをする資産を組み合わせて保有することも、リスク回避のひとつ。それぞれの特徴をよく理解して投資商品を選び、それらの配分を検討していきましょう。
このことから、安定性があり長期保有に適する金に比べ、プラチナや銀はハイリスク・ハイリターンで投機色の強い貴金属と言えます。
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